館 カレンダー『北国の小さな物語』作品全集
★2001年 12
『雪夜の栗の木』

 ここは函館の郊外の修道院。
修道院の丘のうえにはいつの頃からか
一本の栗の木がある。
今では栗の木もすっかり葉を落とし、
深い深い雪に閉ざされて眠りについている。
明かりといえば
二人の雪だるまが灯すランプの灯と
たゆたゆと降る雪の明かりだけがかすかに灯っている。
この神聖な世界が
ただ愛と静寂だけで満たされていた
おぼろげな冬の宵のことである。