館 カレンダー『北国の小さな物語』作品全集
★2005年 2
『 大木の叫び 』

ここは、札幌の南 支笏湖西岸の森。
そこここに、桂やナラの大木が点在している。
その森の奥には、ことさら大きな数百年の時を経た一本の桂の大木があって
大空に向かって、うねるように枝を張り巡らせている。
「なんという寒さだろう。凍りついた体がキシキシと音をたてる。
ああ、冴えわたる月よ!おまえがこの苦しみを照らす最後の夜であればよいのに!」
冬の夜の森は音までも凍りつかせるのか
桂の叫びは枝からほんの微かに雪が落ちたほどにしかならなかった。
ここは厳しい寒さだけが支配する、眠りの世界である。