館 カレンダー『北国の小さな物語』
★2000年 10
『虹の空へ』

 虹というと,なぜか夏をイメ−ジする。しかし虹は秋から晩秋の季節によく見かける。
この作品の虹を撮影したのもちょうどその頃で,二本の樹たちもその葉を黄色に染めるそんな季節のことだった。
 冷たい雨が降ったりやんだりを繰り返し,そのたびに場所を移しながら虹はその鮮やかさを増したり,消えたりを繰り返していた。
 もう少しで,お日様が西の地平線へ沈みかかるその瞬間,雨足が強まり今までにも増して鮮やかな虹が天空高くかかった。これはその瞬間のもので,雨に濡らされた収穫後のトウモロコシ畑が夕日に照らされ,その輝きを増している。
 秋の夕暮れ間近,季節の流れは最高の瞬間に達した。

 

【サケ】
サケは生まれた川に帰ってきます。そのことは母川回帰といって,生まれたときに 覚えた母なる川だけがもつ特有の匂いをかぎわけるのだそうです。
サケは秋,10月頃産卵され,2月頃ふ化します。冷たそうですね。生まれたサケの赤ちゃんは真珠色していて,とってもひ弱に見えます。しかし3月〜4月頃になると雪解け水に乗って川を下り,あの大きな海へと一生をかけた旅へと向かうのですね。そして,再びこの生まれた川,母なる川に彼等が帰ってくるとき,それは彼等の死を意味するときなのですね。川を遡上する途中,サケは一つの愛と出会います。産卵までのその短い瞬間に
燃えるたった一つの愛ですね。北国の緊迫した盛秋の彩りは祝福の彩りです。また,
サケはそんな季節の終焉の見せる秋の高まりの中,寄り添い死んでいくのです。季節の終焉とサケの一生の終わるその交錯にほろりと涙が浮かんでしまいます。