館 カレンダー『北国の小さな物語』
★2000年 4
『すみれ可憐』

ここは夜景の美しさでその名を知られる函館山の森の中
函館山から見る函館の街の美しさを
まるで宝石のようだと言うとしたら
函館山の森の中に息をひそめて咲いている花たちもまた
森の宝石と呼ぶにふさわしい。
さてこの森の宝石たち
その小さな体からはとても想像できないほど時間をかけないと
花を咲かせることができない。
小さな花が一輪咲いているとしたら
そこには10年という秘密の時間が隠されている。

【早春のエフェメラル・Spring ephemeral
北国に春が来ると野山は,福寿草,カタクリ,すみれなど春の
小さな花々によって飾られます。このカタクリなど春に咲く小さな花々のことを英国では「Spring ephemeral 春のはかなき命」と呼びます。ephemera(エフェメラ)というのはカゲロウのことでカゲロウが朝生まれて,夜には死ぬ運命を抱いたはかなき命をもつことから全てのはかなき命の生き物に対し,それをエフェメラル的な(カゲロウ的な),つまりエフェメラルと表現する。春の野山に咲くこのようなエフェメラルたちはその命がはかないばかりではなく,その花を咲かせるためには種を落としてから10年という時間を要する。あの小さな花,あの小さな体をつくるのに10年かけないとならないことを思うと気が遠くなってしまいます。