館 カレンダー『北国の小さな物語』
★2000年 5
『海の見える丘』

函館から室蘭にかけてつづく大きな湾は
噴火湾と呼ばれる。
ホタテ養殖が盛んな静かな海の広がりだ。
その噴火湾を望む小さな街に
八雲町といって,緑の牧場のたいへん美しい街がある。
その牧場からはどこからでもよく海が見えて
緑の丘のむこうには,青い海と海に浮かぶ白い舟の姿がよく見える。
ここの牛舎やサイロもかわいらしいものが多く
静かで,おとぎの国のような世界がここにはあるようです。

【白 樺】
白樺は美しくも短命な樹だ。そして孤独を嫌う。
森ができていくその途上,その始めの若い森を担い,白樺はその白く美しい樹幹で森を飾る。そしていつしか消えゆき,森は他の樹に受け継がれていく。白樺,森,人,そしてこの世界全体がどこか似ている。  ああ,時がかすかに,美しく巡っていく。
 白樺の樹液はとても甘い。北海道北部の街に,美深(びふか)という街がある。そこでは白樺の木からシロップをとり,白樺糖や白樺酒を造っていると聞く。美しく甘く,しかしはかない白樺の木の命を想うとき,人は何を想い,何を感じるのだろう。