館 カレンダー『北国の小さな物語』
★2002年 10月
『ツルリンドウ実る』

函館から江差方面へ、国道227号線を西に向かい
日本海に出る直前に厚沢部町という街がある。
その厚沢部町にはレクの森と呼ばれる森があって
森はその入り口から豊かな樹林に彩られる。
落ち葉の頃、そこに行くと
北海道のどの森でも見たことがないほど多くの種類の木の葉が落ちていて
嬉しくて、座り込んでしまう。
そんな森の入口で、落葉と日の光にまみれて
ツルリンドウの実が輝いて見えた。
野に咲くリンドウはそこはかとなく寂しいほどに愛らしいが
今日ばかりは、秋の日差しのせいかキラキラ力強く感じた。

【マロンケ−キ】
あるぽかぽかした秋の昼下がり、近くにあるマザ−グ−スというケ−キ屋さんのマロンケ−キを食べた。買う時は気づかなかったが、このマロンケ−キのクリ−ムは白っぽいアズキ色をしていた。帰って、ひとくち食べて、考え込んでしまった。マロンケ−キを街のケ−キ屋で買うと、それはモンブランと言われ、黄色い糸状のクリ−ムがのっかている。でも、このマロンケ−キはアズキ色をしている。確かに、栗はつぶしても黄色にはならない。その時、瞬時にそう思い、悲しかった。ぼくは偽物がいやだ。真面目に、真摯につくられたものが好きだ。本物だと思えるものに出会うと、その反動で喜びがこみ上げてくる。人の喜びとは本物を創ることと出会うことにあるのかなあ。