館 カレンダー『北国の小さな物語』
★2002年 7月
『天国のお花畑』

ここは大雪山。
黒岳から北海岳に至る沢沿いのお花畑。
こう見えても、標高2000m近くあるところだ。
手前に咲く黄色い花はミヤマキンバイ。ピンクのはエゾコザクラ。
沢むこうには、7月も終わる頃というのに雪が残る。
平地はもう夏なのにここはようやく春が来たばかり。
一日お日様が照れば、
それだけで、蕾は膨らみ、花が咲く。
時間は集約され、張りつめて流れゆく。
美しい女性の魂のような世界。
美しい女の子の笑い声が聴こえ、蝶が舞い、花々が咲き競う。
ああ、天国のお花畑、心の中にだけあった秘密のお花畑。

【夜の森の匂い】
撮影の旅に出ると、森の中で眠ることが多くなります。北国特有の針葉樹の森の中です。夜になると森の中ではどこからか甘酸っぱい匂いが漂ってきて、甘い想いで満たされます。この甘い匂いをかぐと愛しい女性と二人で過ごした夜のことを思い出します。そして、自然とシュ−ベルトのセレナ−ドのメロディ−が浮かんできます。彼のセレナ−ドは彼の死の直前に創った歌曲「白鳥の歌」の6曲目で、詩人レルシュタ−プの詩にシュ−ベルトが曲をつけたものです。白鳥の歌とは「白鳥は死ぬ時に一声美しく啼く」という言い伝えからの命名で、シュ−ベルトという白鳥の最後の歌なのですね。セレナ−ドの最後の詩句にこうあります。
「震えながらあなたを待っているのです。来て、ぼくを幸せにして下さい!」