館 カレンダー『北国の小さな物語』
★2002年 8月
『夏の夜空に舞う』

夢にまで見て
この日が来るのを待った。
雨が上がり、待望の晴れ間が広がる。
大雪山上空の夜空は、申し分なく黒く透明だ。
白鳥座は入り乱れた銀河に身をひたし
大空の雄大な時の流れの中を飛翔する。
そして、銀河の流れは伝説のごとく
織姫と彦星の間を分かつように雄大な流れとなり
南に控える射手座の星を飲み込み、膨らみを増す。
ぼくはこの一枚に、全精力を傾けた。
どうか、心ゆくまでこの一枚を観照して下さい。

【オルフェウスの琴】
昔、ギリシアにオルフェウスという竪琴の名手がいて、彼は美しいニンフのエウリディケを愛し、妻にむかえました。二人はとても楽しく暮らしましたがある時、エウリディケは羊飼いに襲われ、逃げるうちにコブラに咬まれ、息絶えてしまいます。最愛の妻を失ったオルフェウスは冥府に向かいます。オルフェウスが琴をかきならしながら進むと冥府のものは皆、彼にそこを行くことを許します。やがて、冥府の大王プルト−ンの前に立ったオルフェウスは「今一度、妻を返させたまえ」と切々と想いを訴えますが、王は前例がないと聞き入れません。しかし、農業の神デ−メ−テ−ルの娘のおかげで願いが受け入れられ「地上に出るまで妻の方を見てはいけない」という約束で許されます。ところが、もうすぐ地上という時思わず妻の方を振り返ってしまいます。するとその瞬間エウリディケの姿はかき消えてしまいます。後悔と絶望に打ちひしがれた彼は気が狂い、山野をあてどなくさまよううちに殺されてしまったといいます。