館の四季
★ かめ虫の越冬★
 丘のうえの小さな写真館のある地域は、かめ虫の越冬に利用され、毎年の秋、雪虫が飛び始める頃の晴れた朝、かめ虫は無数の集団をなして、この付近一帯に襲来する。
 彼らはモノの隙間に入って越冬する目的で人間の家屋に襲来するのである。
しかし、いくら寛大な気持ちを持っていたとしても、かめ虫だけはどうしても受け入れることはできず、いつも襲いかかってくるかめ虫から館を守らなければならない。
 その時はどんなに忙しくてもかめ虫と戦わなければ、その冬中、ひどい目に遭わされるのだ。
僕たちが、かめ虫を恐れる理由は、かめ虫の臭さによるところが大きい。それから大切なポストカード類の中に侵入してくることも恐ろしい。
 そうした理由から僕たちはある秋の晴れた昼間、何日間にも渡って、無数のかめ虫と戦っている。

その方法として、僕は掃除機を持って館内の回りを定期的に何百周も回る。そして、慶ちゃんと有〜ぽんは合成洗剤の入った紙パックに割り箸で一匹一匹落としていく。まさに、気の遠くなる作業である。
 しかし、僕たちはこの作業を通して、合成洗剤がいかに恐ろしい物質であるかを学んだ。

 こうして戦っても、その守りを突破してくるかめ虫は多く、冬中、そして春先など暖かくなるに従って、かめ虫による苦痛は続く。
 上の写真にあるかめ虫はぼくたちのそうした守りを突破し、物置の板の隙間で越冬に成功したかめ虫を撮影したもので、これだけでも、数百は下らないだろう。
 秋に襲来するかめ虫の数は、その数百倍、数千倍に及び、この地域全体で推定、数億のかめ虫が襲来するのではないか、と僕は考えている。

 しかし驚くべきことに、そのかめ虫でも、新築の家や新しい家には寄りつかない。建材から出る接着剤などを嫌っているのだろうと思われる。すなわち、新建材はかめ虫さえもが嫌うのであり、そこに人間は気づかずに棲み、子供を育てているのである。