館の四季
★ 2007年8月吉川君が来た★
3年ぶりに我が友人、吉川有二君が丘のうえの小さな写真館に来てくれた。2007年8月28日の皆既月食の次の日、8月29日のことである。
 彼はこの一年、土地家屋調査士の難しい試験を受けるために猛勉強していた。そして数日前その試験を終え、日本列島放浪50日間の旅に出た。その途上に立ち寄ってくれたのだ。
 
 彼の駆るバイクはホンダのカブ。1リットルのガソリンで約60km走ることができるカブでの放浪は交通費をほとんど必要としない。
 しかし、今のこの日本の交通事情では、常に危険と隣り合わせの厳しい旅となることも否めない。
だが彼はこのカブを駆って、無料のキャンプ場や公園や山小屋をねぐらとして放浪し、ただの温泉に入ることを無上の喜びとしている。自称“北に生きる優雅な男”である。
旅の相棒のホンダカブと吉川君。
 丘のうえの小さな写真館にはたった1日いただけで、大雨の東北へと旅立っていった。今回の放浪では彼をどんな苦難と優雅が待っているだろうか。
【2007年東北放浪の旅より】 
旅の途上より丘のうえの小さな写真館宛に送られてくる吉川有二君からのホッとタイムの東北旅の手記です。
■8月23日
新製品『スーパーアズキバター石鹸』造りましたので持って行きます。/札幌の自宅を8/23日に出発です。

■8月29日
東大沼でテント張ってます。月食は観れませんでした。今日は何時頃に行けばよろしいですか?/
ようやく丘のうえの小さな写真館に来ます。札幌を出てから7日目。

■8月29日
近くにいますので後1時間以内に行きます。
/こうして吉川君は丘のうえの小さな写真館に途中立ち寄り、1日いただけで、早速東北へ旅立っていきます。旅立ちの前の天気予報では、東北は一週間荒れた天気が続きそう。波瀾万丈の旅になりそうですよ。

■9月2日 最悪でんがな

今日は雨の中、八甲田の猿倉温泉入ったまではよかったが、出るとテントのポールを落としたことに気付く。
目を皿にして来た道引き返す。ポール無しのテント(ただ袋に入った状態)で寝るのかと覚悟しながら。
舗装路ではみつからず、たぶん荒れた林道だと念入りにさがしていくと5キロ入った所でみつかる。
車にひかれてたが、幸い折れてなかった。城ガ倉大橋走行中霧雨強風で倒れそうに。
夕方、黒石・虹の子ダム公園につくとヨリニヨッテ7月24から工事現場事務所となっており立ち入り禁止に。
雨降ってきたので100メートル以上上の徒歩でしか行けない展望台までバイクごと上げようと決意。階段横の草まみれの急坂をバイクおりて1速で押し上げるようなかたちで無理矢理頂上まで上げる。
東屋あり、その下にテント張って雨でも優雅に過ごせると思いきや、ブーンといやな音が。
 東屋の屋根裏見上げるとまた蜂の巣が…「またハチかいっ!」昨日のキャンプ場の炊事場と同じく…今不気味なその音を聞き、いつか刺されるのかと恐怖に怯えながら過ごしてるところだ。雨強くなってきました。東屋の下とはいえ雨水が流れ込んできそう。

テント張れるくらいの広いすのこ状のテーブルあるのですがそこに張ると雨の心配0ですが、蜂の巣にかなり近くなりま
す。フライシートの裏に侵入されそうなのでやめときます。優雅に青荷入浴後、テント張ってる虹の湖展望台にもどり
必要な荷物を支度、黒石市街見物、買い物して梵珠山登山口へカブ走らせる。なんと19時に登山開始

ヘッドランプつけて暗闇の登山、優雅な山小屋生活目指し汗だくになり必死で登る。1時間30分のコースを40分で登り
きる。己の山小屋バカぶりに自分でも呆れかえってます。今、ロウソクともし優雅な夜をすごしてます。

★奥々八九郎温泉にて/秋田県小坂町

昼前雨やんだので虹の湖展望台後にする。14時過ぎ念願の奥々八九郎温泉に到着!車2台来てたがすぐに帰った。草木の生えない赤茶けたの広場に湯船が6個程、中の1つはドバドバと絶え間なく湧く炭酸泉。44度と熱めだが、こんなに豪快爽快な無料温泉入ったことなし。まさに天然のジャグジー風呂!他の湯船は適温で長湯できそうだ。のぼせたので向かいの川につかり体を冷やし再び入るを繰り返す。明日晴れならば近くにテントはりランプ灯して夜も入りたし。放浪最高!東北最高!林道手前の田んぼのど真ん中に簡素な建物あり。
「奥々八九郎温泉を入らずして死んでゆく大多数の日本人は、なんて不幸なんだ!」と思えるような温泉です。もみぽんも是非入って下さい。

★ランプの秘湯(青荷温泉)にて/青森県
青荷は無料パスポートで入りました。9年前にも行きましたが、急坂の連続で、「こんなところによく温泉宿つくったよな」てな感じで特に最後の坂は車が壁に貼りついてるようでした。日帰りは15時までなのでランプの明かりを見ながらの入浴はできませんが、3時間も入ってました。渓流の音を聴きながら。
 一度泊まって「何もない贅沢以外には何もない」ランプの青荷の夜を過ごしてみたいものです。


★放浪とは害虫との戦い★

■蚊
:言わずと知れたキングオブ害虫。小さいものほど痒く感じるのはなぜか?
■蛾:廃屋、山小屋の屋根裏に潜む黒三角蛾(正式名称は知らない)は特に厄介だ。ランプ、ロウソクを灯して食事してると「ブォン!」と重量感のある体で、顔や光源、めがけて突進してくる。食事やビールに入り、隣粉まみれになりパーになったこともある。
■カメ虫:赤腹で緑色の2センチはあるカメ虫が食事中、首筋に飛んできたので反射的に払いのけると、首のもげたそれが地面に落ちた。手に臭いがつくわ、食欲も失せた。
■ハサミ虫:知らない間に袋ケースに入ってる。その糞がたまってたり不快。挟まれる(刺される?)とかなり痛い。
■蜂:東屋の屋根裏に巣を作ってることが多く、うかつにテントを張れない。なにもしないのに黒いというだけで頭を刺されたこともある。
■ザトウムシ:特に害はないが、ビジュアル的に不快。このような乗り物が開発されれば、どんな悪路でも走破できそうだ。
■カラス:遠くから聞くぶんにはよいが、朝方耳元で鳴かれて起きるのは不快だ。食い物から少しでも目をはなすと、ズタズタに荒らされ廃棄せざるをえなくなる。ゴキブリと同じくいかなる天変地異がおころうが、絶滅しないであろう鳥である。
■蝿:払っても払ってもよってくる。食事がまずくなる。
■ブヨ:目の前をチラチラ、どこまでもついてくる。かまれるとパンパンに膨れ上がり、半年も痒みが続くことも。それが目に入り、瞼の裏をかまれ旅を中断したこともあり、1週間も痛みが治まらなかった。アブ:特に露天風呂入浴時、サーモグラフィ内蔵の目を持つ奴らは容赦なく次々と襲いかかってくる。こうなるともう優雅に入れたものではない。
今、雨のため種市の内陸、大和の丘キャンプ場の炊事場にテント張り待機してます。

いま、岩手久慈の遠島山山頂1269m晴天です。
遥か西に岩手山も望めます。登山道には白マイタケや大きな栃の実がゴロゴロ。
昨晩ここの山小屋にたどり着くまでにえらい目にあいましたので、
またその状況を圏外の山小屋で作成して下山後、転送します。おたのしみに。

種市の無料だと思ってたキャンプ場、雨模様だったので連泊しようとしてたら、
昼過ぎ管理人が来て、「500円だが、昨日の分はよいが今日も泊まるなら徴収する」と言われ、逃げるようにそこを去る。
 曇天の中、久慈にカブを走らせる。念願の『久慈のうに弁当』を買うためだ。
売り切れ必至なのだが、幸運なことに最後の1個が残ってた。
 
 今日の宿は久慈遠島山荘という、山小屋ガイドによると立派な山小屋だ。
そこで優雅に過ごす為、ビールや食材菓子など買いこんでいく。
山小屋に急ごうと県道に出ようとするが地図どうりに行けども出れない。
久慈の町は標識が少なくわかりづらい。
焦ってきたので人に道を尋ねようやく出れた。
デタラメのツーリングマップを信じた私がバカでした。
県道を走りだして間もなく、雨がポツポツ。
本降りになってきたのでダムの東屋でカッパを着て再出発。
寒いうえ薄暗くなり、不安になってくる。
登山口向かいの鍾乳洞から冷たい空気が吹き出してくる。
そこから山小屋までの林道は、徒歩か4駆でしか行けないかなり厳しいダートと書いてたが「どうせたいしたことないだろう」と荷物満載のカブで入って行った。
やけに突がった石が多いダートで、タイヤが破裂しなければよいが…。
わずか数百メートル走ったところで登らなくなった。
仕方なく降りようとしてスロットルを戻し、ブレーキかけるとそのままズルズルと後退して止まらない。
バイクもろとも転倒すると大変だ。焦りながらスロットルをふかしなんとかくいとめた。それから降りて1速で押すようなかたちで登っていく。辺りはもう真っ暗。かなりの急勾配で、またプラケースが後ろに転げ落ちないか心配だ。次落ちれば完全に破損、修理のしようがないだろう。
 
 こんな荒れた急なダートを4〜5キロも…こんな形で30分も登ると、マラソン大会のラストのあの息苦しさ、喉はゼイゼイ、血のような臭いがしてきた。
手も足も棒のように動かなくなる。
寒かったはずが、カッパで蒸れて不快この上ない。
すると突然、この押したかたちでも登らなくなった。
後輪が急勾配で深砂利に飲み込まれ、立ち往生。登れど登れどたどり着かない。
何の標識もなく山小屋が現れる気配さえない。
ヘッドライトに照し出されるのは不規則な深い溝のある鬼のような急勾配のダートの、雨に濡れ不気味に反射する赤茶けた石や砂利だけだ。
まさか道を間違えたのでは…もうこれは地獄だ!地獄としか形容のしようがない有り様だった。だが、ここまで来て引き返すわけにもいかない。
50ccの原付に荷物満載でこのような道に挑んだ己と、こんな山小屋ガイドなんか出版した著者を恨みながらだだ前進するしかない…
冷静になり荷物を下ろして必死で押すとなんとか脱出できた。
バイクのスタックなんて初めてだ。
荷物を2つに分けて進もうと道端に大きなプラケースを置き、目印にLEDライトを点けて上に置き、後もう少しできっと着くと信じて前進。
すぐに道が分かれて少し入るが違う道と判断、引き返し直進すると1キロほど走った所で『遠島山荘』の標識が。やっと着いた。
忽然と目の前に立派な小屋が。早速入ろうとドアノブを引いても開かないっ!
まさかまた利用者のマナーの悪さから鍵されてるのでは。
雨のシトシト降る中、そのまま崩れそうになってしまった。
が、よく見ると上下に煽り止めしてるだけではないか。
慌ててドア開けとりあえず重い荷物全て下ろし、残してきたケースを運びにもどる。
やはり下りでは1速のエンブレだけでは全く効かず暴走だ。全くとんでもないダートだ。
やっとのことで、全ての荷物を小屋に搬入、早速ランプを灯し、うに弁当とビールで至福の時間を味わう。
よくこんな場所にこんな立派な山小屋を建てたものだと、ただただ頭が下がる思いと、感謝の気持ちで一杯になった。
-カブ放浪記 久慈市 遠島山山荘への道よりの報告 2007.9.17.-

■13日 飯も食わず、黒崎の海岸まで下りて戻り、北山崎も七百数段もの階段を下り、五百数段のはしごのような階段を登り、遊歩道散策。
 大勢の観光客は上の第2展望台までで、それより先は誰とも会わなかった。
汗ビッショリでフラフラになり、バイクにもどる。
岩泉の道の駅でパン1個で朝昼兼食。ケチもここまでくると病気か。
 今日の目的地は盛岡の北、岩手山の登山口馬返しにある無料のログハウス。
盛岡まで95キロ。この辺りのガソリンは149円もする。
 この先スタンドは少なくガソリンはギリギリもつかどうかだが、
安い盛岡で入れたいので、給油せず出発。
 
 早坂峠ではもう針は一番下になってた。
これからの下りはエンジンかけずにジェットコースター走行。
ガス欠が心配でツーリングの楽しさも半減。
盛岡郊外の滝沢分レ手前でガス欠。
 予備缶には0.2リットルほどしかなく、それを入れて急いで国道にはいり、
133円のスタンドで給油。助かった。
たかが数十円のため…ケチは困ったものだ。
■14日 岩手山馬返しキャンプ場にあるログハウスは快適な小屋だ。98年の豪雨の時、
1週間も滞在させてもらった。あの時この小屋がなければ大変なことになってただろう。今日は大きな荷物をここに置かせてもらって、
八幡平ツーリング&温泉ツアーだ。
温泉は雑誌『自遊人』の付録『全国無料温泉パスポート』で入浴だ。
まず松川温泉へ。
ここは松川渓谷渓流沿いにある温泉で、紅葉の頃が特に素晴らしいそうだ。
内風呂はひなびた感じてかなり落ち着ける。
岩風呂は男女時間別で、残念だが時間なくパスした。
八幡平アスピーテラインに乗り見返り峠目指して走る。
荷物下ろしてきてもやはり原付なので、ノロノロの登坂末、峠に到着。
少し霞んではいたがまずまずの眺め。
温泉はしごのため、秋田県側を下る。乾燥したキリッとした空気に針葉樹の爽やかな香りが心地良い。
 このようにダイレクトに風を感じることができるのがバイク旅の醍醐味である。
次の蒸けの湯は玉川温泉をコンパクトにしたような温泉で、あちこちに蒸気が立ち上る荒涼とした風景。
 男用露天風呂は、茶髪の若者3人が湯船を囲んで世間話をしており、そんな湯船に入ってもあまり気分がよいものではないのでパス。
 混浴のぬるめの露天に入り、
その後は急いで次の後生掛温泉へ。
まず自然研究路をまわり、泥火山などを見学。『後生掛』の名前の由来はなんだか悲しい。茶家で名物『黒ゆで玉子』を食し、温泉へ入る。
 この温泉は7種類の風呂が楽しめ、『火山風呂』は底にたまった泥を体に塗り込むことで肌がスベスベに。
 箱蒸し風呂は、頭を出して体は蒸した木の箱に入るというもので、他人が並んで入ってるのを見ると滑稽でかなり笑える。
 例えは悪いが、さらし首のよう。
出た頃には、もう薄暗く、これからまた80キロと思うとウンザリ。
寒く霧のかかった峠を越えての夜間走行。体が冷えて温泉に入った意味なし。
本当に1日の短いこと。働いてたら長いのに‥

■15日 今日は盛岡で情報収集と食べ歩き。16日まで盛岡冷麺が半額だとラジオでチェックしてた店へ。
 店は昼前でかなり混んでた。
冷麺はゴムっぽくて好きでないという人もいるが、
でんぷんを使ったコシのある麺とさっぱりした辛さが好きで、
私は盛岡に来れば必ず食す。
この日、盛岡は秋祭りの最中で山車が街を練り歩いてた。
腹ごなしに街を散策。台風の影響でかなり蒸し暑い。
夜もライトアップされた山車が練り歩くということでこれも見物。
古き良き日本の秋祭りを久々に堪能させていただいた。
腹が減ったところで、じゃーじゃー麺の店『白龍』へ。
9年前に1度食べてからやみつきに。
 うどんに似た麺に、にんにく味噌を混ぜ合わせて食べるシンプルなものだが
毎日食べても飽きない旨さだ。
祭りのせいか、かなりの行列。
以前3回はこんなに並んだことはない。大阪から来たおばちゃん達も団体で並んでた。これを食わずして盛岡を去れないので待つのが嫌いな私も1時間ほど待ち、
やっとありつけた。
ラー油とおろしにんにくをてんこ盛りにし、忘れかけてた旨さを3年ぶり味わった。
食べ終えた皿に生卵を掻き混ぜスープを注いでもらう。
締めの『ちいたんたん』だ。
さっぱりと後味もスッキリ。
これで満足と馬返しの小屋へ急ぐ。
戻ると誰か人のいる雰囲気が。そ〜っとライトを照らして入ると
2〜3人だか、もう寝袋でお休みになってた。
なるべく迷惑にならぬようそ〜っと着替えて、外で歯を磨き、戻って私もすぐに寝床についた。
それでも起こしてしまったようで、大変申し訳なかった。
ちょうど雨も降りだした。
■16日 朝、まだ雨は降り続いてた。
泊まってたのは熟年の夫婦で、昨晩のことを謝った。
雨なのにこれから岩手山登山らしい。
私は馬返しにまた1泊待機するか、次に進むか迷ってたが、小雨になったり強く降ったりとなかなか決断できずイライラしてた。
じっとしていられず午後2時小雨の中出発。
 鉛温泉めざし、雫石経由、山中の気持ちのよい静かな県道、
峰越峠を越えて花巻の無料のキャンプ場へ。
が、着いてみると立ち入り禁止の看板が。
入って見ると、設備のほとんどが取り壊され巨大な屋根のある吹き抜けの建物があるだけだ。
この中にテント張ると雨はしのげるが、地面の土はやけに湿っぽい。
人が来て追い出されるのもいやなので、少し先にある豊沢湖園地へ。
ここはかなり荒れたキャンプ場でほとんど利用されてる形跡がない。
妙な油の臭いが鼻につく。どこも既に水浸し。テントなぞ張れそうにない。
仕方なく少し坂を登った所にある東屋にテントを張ることにした。
 テントを建てようとするとポールの中を通るゴムひもが切れてバラバラに。
修理に時間かかりそうなので、慎重にポールを繋ぎ合わせ設営。
東屋はコンクリのイスとテーブルが固定されており、
なるべく内側に食い込ませるように設置したが、かなり外にはみ出ることになった。
レトルトカレーで夕食。テント内は22度なのにかなり蒸し暑い。
まもなく雨が強くなってきた。
夜中、強い雨音と雷で何度も目が覚めた。
テント内にパッと蛍光灯がともったような稲光、雨がテントにしみこんできた。