応援団

さん

 今まで生きてきた中で、彼ほど優しい人に出会ったことがない。
そして、話しをしていて、これほど胸が高鳴ってくる人もいない。
 

伊藤武義さんと出会ったのは今から8年前のこと。
その頃、ぼくたちは白樺やポプラの苗木が欲しくて色々探していたが、
なかなかなくてがっかりしていた。
ちょうどその時フジカラーの福島俊彦専務からいい人がいるよと紹介してもらった。
それが今回紹介する札幌農林(株)代表取締役社長、伊藤武義さんだった。

まず、ぼくたちが彼から受け取った苗木は150円のポプラだった。
その時は細い棒っきれだったが、今ではその時のポプラは生長して10mを越える。
それを出会いの初めに札幌に用事があるときは必ずぼくたちは伊藤社長を尋ねた。
 いやな仕事の後などでは特に嬉しかった。
ぼくは樹木のことに関して基礎がないから、
伊藤専務からお聞きする樹木の基礎的な教えは
ぼくたちに計り知れない夢を与えてくれた。
 
エリカに憧れて行った夏のスコットランドの話し、
原種のリンゴの苗木のこと、
近くの公園にどんぐりを拾いに行くこと、
彼から買ったリラの苗木の新芽を見て疲れていた心が癒されたことなど、
いろいろと思い出される。
中でも激しい雨の中で、
上がってしまった車のバッテリーを交換してくれたことは
生涯忘れられないことになった。

 

彼の仕事は多岐に渡っているが、
端的に言うと、木や花の苗木を育てること。
札幌の街中で見かける樹木は伊藤社長たちが丹精込めて創った樹木なのだ。
また伊藤専務のご両親はもと関西の人で関西弁を使う。
そのこともぼくには無縁ではないような気がするけれど、
伊藤専務は全く関西弁は使わない。


出身地が同じだと親近感はあるが、
人間深くつき合うとしたらあまりそれは関係がないような気がする。
同じものを見ているとか、共感できるとか色々と人がつき合うには理屈があるかもしれないが、
そんな理屈も越えて言葉にできない親しみが感じられる人がいるものだとぼくは思う。
 伊藤専務のお父さんにはぼくは親しみと懐かしさを感じ、
伊藤専務には優しさと言葉にできない夢を感じる。


人同士のお付き合い。
 年をとればとるほど時間が無くなって行くが、
それでも共にいたい、共に感じていたい、共に夢を見ていたい、
と思える人との本質的なお付き合いの時間は大切だと、とつくづく思う。
 だが、逆に言えば、皮相的なお付き合いはご遠慮したいと思うわけである。
 

 
札幌農林の事業所に行くと、その玄関先を飾る青白いもみの木と出会う。
コンコロールモミ(コロラドモミ)だ。
このもみの木は伊藤社長のお父様がコロラドに行かれたときに、
種を持ち帰られて、農林所の玄関の前に植えられた木である。
 
モミの木は同じ針葉樹でもトウヒやマツなどと違って葉先が尖っておらず、
触っても、ふわ〜っとした柔らかい感じの木である。
 

僕は自称「もみぽん」と自分のことを名乗るが、
僕の理想と仰ぐ木がこのモミの木だからだ。
これは「小さなモミの木」という意味であるが、
モミの木は常緑で冬になっても若々しい緑色をし、寒い冬にも耐え、
その上、葉が尖っておらず、触っても柔らかく優しい木であり、
そんな木のような人でありたいと願っているからである。

 

先日も、函館出張の折りにここ、丘のうえの小さな写真館に立ち寄ってくれた。
時間はなかったが、寸分を惜しむかのように話が弾んだ。
そして、話し終わったとき、やはりいつもの時のように、僕の胸の中は素敵な夢で満たされていた。

2009年7月4日