丘のうえの小さな写真館 写真館通信の世界
★★秋の星空★★
では、付録の二つの星図を参考にしながら、秋の星座のお話をしましょう。
■やぎ座

 秋の星座のトップバッターとして、射手座のすぐ隣に現れる3等星以下の星を連ねた逆三角形をした星座です。
このやぎ座は森と羊と羊飼いの神パーンの化けた姿で、上半身がやぎ、下半身が魚という奇妙な姿をしています。
やぎ座のγ星はナシラと言って、それは「喜びの便り」という意味になります。いい名前ですね。
 ▼山羊宮の回帰線
ギリシャ時代にはこのやぎ座に冬至点があって、やぎ座を通り過ぎるとき太陽は一番南に低く下がったのです。つまり、冬至の日の太陽がここにあったわけです。それで、この辺りを「太陽の南の門」と呼ぶのです。冬至点は現在では、射手座に動いていますが、この名残で、今もなお冬至点のことを「山羊宮の原点(さんようきゅうのげんてん)」と呼んでいます。また、地球上で冬至点の直下にあたる線「南回帰線」のことを Tropic of Capricorn 山羊宮の回帰線と今もなお呼んでいるというのは面白いですね。

■水瓶座

この星座はみずがめをかつぐ少年の姿で彼の持つ水瓶から水が流れ出ている様子を思ってください。ギリシャ神話では、この少年はガニメーデスというその体が永遠の美と若さをを表す金色に輝いていたといわれる美少年でした。
 まず、水瓶座を探すときη↓ζ↓γ↓αのじぐざぐに並んだ星が目につきます。これが手に持った水瓶にあたりα↓β↓θあたりが少年の姿になってλ↓φ↓ψ↓ωの緩やかなカーブが水瓶からこぼれる水の流れになります。そして、この水の流れは南に流れ下り南の魚の口フォーマルハウトへと、注いでいます。
 ▼水に関する星座が並ぶ。
水瓶座の原語 Aquarius(アクエリアス)
は「水を持つ男」という意味で、ギリシャ時代よりずっと以前にこの水瓶座の原型ができていたとされています。バビロニア、古代エジプト、古代アラビアなどですね。また、カルデアではここに「海」という星座が作られていました。その名残として隣の射手座のρ星はヌンキ↓「海の印」と名付けられていて、ここから水瓶座側が海であることを表していました。こんな感じで、地中海沿岸から中東の各地でこの水瓶座付近に魚座、南の魚座、くじら座、いるか座、半魚のやぎ座など水に関する星座をずらりと配置したのはこの地方の雨期に当たる1月〜3月にかけて太陽がこの辺りを通っていくためだと言われています。

■南の魚座

水瓶から流れ出た水を、あおむけになって飲み干そうとしているのが、南の魚座で、その口の所で光っているのが
秋の空でたった一つの一等星フォーマルハウトです。フォーマルハウトは一等星のない秋の空では明るく見えますが、全天20個ある一等星の中では 番目の明るさです。おまけに南に上りつめても 度くらいの高さにしかならないから、見た目にも地味に感じます。それで、日本などでは「南の一つ星」という、ちょっとセンチメンタルな表現をするのでしょう。しかし、ペルシャ時代にはおうし座のアルデバラン、さそり座のアンタレス、しし座のレグルスとこのフォーマルハウトの四つの星を東西南北の四方位を守る「王の星=ロイヤルスター」とし、この星をハストラング(北)と呼んでいたと言われています。またフォーマルハウトは一等星の中でシリウス、プロキオン、アルタイルについで、4番目に地球に近い星で22光年の近距離にあります。

■くじら座

全天で4番目という大きな星座で、そのο星(オミクロン)はミラ「不思議なもの」と呼ばれ、330日周期で2等星から10等星までその明るさを変えます。この星は変光星発見の第一号となった赤色巨星で、一生の終わりに近づいた老人星です。ぼくたちはミラが増光したときに見たことがないので、いつか見てみたいです。

■ペガサス座

ペガサスというのは羽のある天馬のことで、北半球から見るとこの天馬は地平高度 度以上の大空を逆さまになって飛んでいるように見えます。神話の中で下半身は雲の中に隠されていて見えないとされています。このペガサス座は「ペガサスのものさし」と言われていて、ペガサスを見つけると、色々なことが分かります。まず、胴体の四辺形ですが、これがほぼ 度の正方形になっていることを覚えます。この四辺形を中心にして色々なことがわかります。下の図にこのことが一目で分かるように示しています。

■カシオペア座

有名な星座ですが、これはエチオピア国王、ケフェウスの妃カシオペアの姿を形どったものです。星図をよく見ていくと、ギリシャ語のそれぞれが次のような意味を持っています。
α星…シェダル「胸」
β星…カーフ「手」
δ星…ルクバー「ひざ」
θ星…アル・マルフィク「ひじ」
このことから、妃の顔にあたるのが、ζ星で、α星が胸だから、右手がβ星、左手がθ星になり、イスに下ろした腰がW文字の中心星γ星にあたり、左足がδ星ε星ときて、右足がκ星ψ星、そして、 番星ということになるのでしょう。いったんW文字の印象を捨てて、星をたどってみてください。それらしく見えてくると思います。

■ケフェウス座

ケフェウスいうのは古代エチオピアの王で、カシオペアがその妃です。そして、アンドロメダ姫が彼らの娘ということになります。
 ケフェウスは3等星より暗い星ばかりの5角形が中心で、カシオペアと白鳥座との間にあります。慣れないとこの5角形さえなかなか見えてきません。まず、およその見当をつけますと、5角形のとんがっていない方の、δεζ星辺りが王の顔になり、α星アルデラミンが王の右手に、5角形のとんがっているほうのγ星が左足の膝にあたります。そして、顔は王妃カシオペアの方に向けて、北極の上に立っています。白鳥座が見えている頃、意外に見つけやすいのでチャレンジしてみてください。また、ケフェウスは地球の歳差運動のためにいずれ、天の北極に輝くことになります。今の北極星はこぐま座のα星ですが、西暦4500年頃、ケフェウスのγ星が6000年頃β星が7500年頃にはα星が北極星になります。その他ケフェウスのμ星に注目してください。この星は異常に赤味を帯びた星で、一番最初にその見事な暗赤色に気づいたウイリアムハーシェルはこのμ星をガーネットスター(ざくろ色星)と名付けます。このμ星は3,6等〜5,1等まで明るさを変える変光星ですが暗いので肉眼ではその暗さを見ることはとっても大変なので、双眼鏡で見るといくらかよく分かります。この異常な赤さはμ星が太陽の1500倍という大きさの赤色巨星だからで、表面温度も二千度以下の一生の終わる寸前の星なのです。

■ペルセウス座
■アンドロメダ座

さて、秋の星座が面白いのは秋の空を飾る星座たちが一つのギリシャ神話でつながっているということでしょう。
このお話の主人公をつとめるのがこのお二人ペルセウスとアンドロメダ姫です。さて、このお話を始めましょう。
まず、アンドロメダ姫は古代エチオピアの王ケフェウス王とカシオペア王妃の娘として生まれますが、ある時、王妃カシオペアがアンドロメダ姫の美しさを自慢します。そして、ついに海のニンフネイレードの五十人姉妹の誰一人もアンドロメダ姫の美しさにはかなわないと言ってしまいます。ネイレードたちというのは海の神ポセイドンの孫で、それを聞いた彼らはポセイドンンにこのことを言いつけます。怒ったポセイドンは大くじらをエチオピアの海岸に送って、色々な嫌がらせを始めます。このくじらは化けくじらで海水をはくと津波が起き、その津波でエチオピアの国は大変な被害が出ます。
 このことを国王ケフェウスが神にうかがいをたてると、王妃カシオペアの高言のむくいであることが明らかになります。そして、海神ポセイドンの怒りを沈めるためには、王女アンドロメダを人身御供としてクジラの生けにえに捧げる他はないことがわかったのです。このことが大衆に漏れ、大衆によってアンドロメダ姫はその手に鎖をかけられ、海岸の大岩の上につながれます。やがて、波間が盛り上がり、恐ろしいくじらが迫ってきます。そして、アンドロメダ姫は恐ろしさのあまり気絶しそうになります。その時、雪のように白い天馬ペガサスを駆って、ペルセウスがクジラに襲いかかります。ここでいったんこの話しを終えて、ここにペルセウスが通りかかったいきさつをお話しします

 ▼ペルセウスの誕生
アルゴスというところに、アクリシオスという王女がいて、彼女にはダナエという一人娘しかいませんでした。そこで、男の子が欲しいと神に訪ねたところ、男の子が産まれるどころか、やがて自分の孫に殺されるだろうというお告げを受けます。孫といえば娘ダナエの子供。娘ダナエを結婚させてはいけないということで、地下の塔に押し込めてしまいます。ところが、かねてから美しいダナエに思いを寄せていた大神ゼウスが黄金の雨となって小窓からダナエの部屋に忍び込んで、ダナエに金髪の美しい男の子ペルセウスを産ませてしまうのです。ある日、ペルセウスの誕生を知った王は、母子ともども海に流してしまいます。母子はセリフォス島に流れつき、そこで、 年の日々が過ぎたある日のこと、ペルセウスは島の王ポリデクテスの酒宴に招待されますが、献上するものが何もないので、ペルセウスは「メドウーサの首」を献上することを誓います。メドウーサというのはゴルゴンの三人姉妹の一人で、髪の毛の一筋一筋がへびでできていて、その顔を見た者は恐ろしさのあまりに石になってしまうという怪物です。そこで、ペルセウスは数々の冒険を経て、見事メドウーサの首をとることに成功します。首を切るときにその血がかかった岩の上から、高くなないて飛び出してきた天馬ペガサスにうちまたがると、王宮に戻ろうとします。その途中、エチオピアの海岸を通りかかり、くじらの餌食になろうとしていたアンドロメダ姫を救い出すわけです。
 こうして、ペルセウスはアンドロメダの命を救ったのですが、その美しさにすっかり魅せられ、アンドロメダ姫と結婚したいといい、承諾されます。
そこで、二人は母ダナエの待つセリフォス島へ帰るのですが、島ではポリュデクテス王が乱暴していたので、これもやっつけてしまいます。
 こうして、ペルセウスとアンドロメダは幸せに暮らすわけですが、二人の間にはたくさんの子供が産まれます。
その子供の孫がヘルクレスなのです。
 ヘルクレス座というのは夏の夜空で輝く星座ですが、ヘルクレスは大神ゼウスがペルセウスとアンドロメダの娘アルクメーネに産ませた子で、このためヘルクレスはゼウスの妃ヘーラに憎まれ続けます。ヘルクレスは成長するにつれて勇敢な若者になっていきますが、ある時、ヘーラの呪いのために、気が狂って妻と3人の子供を火の中に放り込んでしまいます。やがて、正気に戻ったヘルクレスはその罪を償うために非常に危険な十二の冒険をやることになります。
▼ヘルクレスの十二の冒険

@しし座…ネメアの森の化け獅子退治
Aうみへび座…レルネアのアルモーネのヒドラ退治
B金色の角を持つケリュネイアの大鹿生捕り
Cケンタウルス座…アルカディアのエリュマントス山に住む猪の生け捕り
Dアウゲイアスの家畜小屋の大掃除
Eや座…スチュムデパロスの湖に住み人々を悩ました鳥の大じし退治
Fかんむり座…海神ポセイドンがクレタ島に送った気狂い牛の生け捕り
Gトラキア王デイオメデスの人食い馬の生け捕り
Hアマゾンの女王の帯を奪う。
Iゲーリュオンの牛の群の分捕り。
Jりゅう座…ヘスペリデスの黄金のリンゴを奪う。
K冥府の番犬ケルベロスを生け捕る。 

 このような危険な仕事を果たした後、やっと自由な身になります。
 こんな感じでお話は続いていきますが、神話はまた次の機会ということにして、言い残したことにちょっと触れておきます。

▼アンドロメダ座γ星アラマク

「天界第一の美しさ」と、この星を絶賛するのは天王星発見でその名を知られる、ウイリアム・ハーシェル。この星は二重星になっていて2,3等のオレンジ色の主星から10秒離れたところに、5,1等の伴星がくっついているもので、この伴星の色が見る人によって黄色に見えたり金色や青色に見えたりと様々なのです。この二つの星の色の対照がとても美しいのです。白鳥座のくちばしの星β星も美しい二重星で今度は「天界の宝石」と呼ばれます。この星はアルビレオと呼ばれますが、3,1等の金色の星と5,4等のエメラルド色の星が 秒角で回り合っているのです。