丘のうえの小さな写真館 写真館通信の世界
★★星はなぜ見えないのか?★★
ぼくは19才まで夜空に星があることを知らなかった。ぼくが初めて星があることに気づいたのは、我が家で車を買って、兵庫県の北部へドライブに行ったときだった。帰り道、ぼくは車の後部で、ぼ〜っと夜空を見上げていた。その時、夜露でかすんだ車の窓ガラス越しの暗い夜空に大きな白い点々が無数にあることに気づいた。ぼくはその時、それが何であるかわからなかった。これがぼくと星との初めての出会いでその時ぼくは19才にもなっていた。その19年を振り返れば、自分のことで精一杯だった時間が思い起こされる。ただ、小さい頃銭湯に行くときに狭い路地の瓦屋根越しに見上げたプレアデス星団(すばる)のことだけは今でも目の前に残像している。しかし、その時「小さい北斗七星だな〜」位にしか思わず、誰にも「あれは何?」と聞くこともしなかった。そんなぼくが高校を中退した頃から星を愛するようになる。そして、今では星の出ていない夜のつまらなさが身にしみる。そして、星が少なく白くかすんだ夜空を見ると、死んだらどこへいくのだろう?と思って不安になる。暗い夜空に無数の星があって「死んだらそこに行くんだよ」と教えられたら、ちょっと恐いけれど、なにか大きな気持ちになっていられる。命をかけて生きることと格闘できるような気がしてくる。しかし、最近の夜空は空が白っぽくなって星が埋もれて見えなくなってきた。晴れていても、2等星がやっと見えるくらいだし、曇っていると街の光に照らされた白い雲が流れていく。夜、雲が浮かんでいる空を見ると、泣きたくなってくる。この思いはどうもぼくだけのものではなく、環境省でもかなり深刻に受け取っている。そのひとつの指針が示されたので紹介してみます。

■光害対策ガイドラインの策定について

このガイドラインは平成10年3月30日に環境庁大気保全局生活環境室が策定したものです。
 
〈背景〉  

都市化、交通網の発達等による屋外照明の増加、照明の過剰な使用等により、夜空の明るさが増大し、天体観測等への障害となることが光害(ひかりがい)として指摘されて久しい。また、照明の不適切または過剰な使用によって眩しさといった不快感、信号等の重要情報の認知力の低下、農作物や動植物への悪影響等が報告されており、適切な対策を求める声が多くなっている。…中略…更に、地球温暖化を防止するため光害抑制のためのシステムを作成し、二酸化炭素を抑制することや光害への取り組みを通じ国民一人一人のライフスタイルの改善を図ることも必要になっている。これらの状況をふまえ、環境基本計画にも取りあげられている光害問題について良好な大気生活環境保全上の観点から捉え直すとともに、人工光のの使用にともなう環境配慮のあり方について光害対策ガイドラインとしてとりまとめることとした。
と背景が示され、経緯、目的と構成、概要と続いていきます。その中で、光害について定義されていますので、紹介します。
      

 〈光害〉
 

「良好な照明環境の形成が、漏れ光によって阻害されている状況またはそれによる悪影響」と定義する。
 
※漏れ光……照明機器から照射される光でその目的とする照明範囲外に照射される光のこと。
とあります。そしてその光害対策に関して野外照明の適切な運用を求めています。そのことを次に紹介してみます    
 
〈照明環境〉

光害が小さく効率的な照明は適切な照明目的の設定、適切な照明機器の設置並びに適切な運用に対する一連の配慮がなされることによって実現する。欧米においては、このような観点から照明環境設計の重要性が認識されており照明に関する組織的な教育体制の確立がなされているとともに、照明を設計する専門の技術者としての「照明環境設計者」の地位が確保されている。光対する環境配慮を推進するためにも、我が国においても照明環境設計者の地位の確立とそのための資格、教育制度の確立が急がれる。
とあります。つまり、まとめてみますと、
光をその目的以外のところに漏らさないような照明環境にしなくてはいけない。ということになります。この目的以外のところに漏れる光について街灯を例にして、説明します。まず、下の街灯の絵を見てください。
 これは函館の照明環境はどうなっているかを調べに回ったときに慶ちゃんがスケッチした街灯の絵です。まず一番多く目にするのが、図1のコブラ型です。次によく目にするのが図2のようなものです。いずれも横方向に光が漏れて、まぶしくて直視することができません。太陽のまわりが明るすぎてよく見えないのと同じで、街灯のまわりがよく見えません。そこで、どんな街灯が良いかといいますと、横や上に光を漏らさない街灯です。特に横方向の光はダメです。それは横方向に光が漏れると直接街灯の光が目には入って車の運転などに危険なのだからです。そこで、横や上に光を漏らさないように工夫された街灯を探してみると、函館から上磯町に行く国道228号の有川橋上に見事な街灯が並んでいました。(図3)これはフルカットオフ型と言い横方向、上方向に光を漏らさないで、肝心の下方向に光を集中させています。平成6年完成で、180wのオレンジ色の低圧ナトリウム燈が採用されていました。
 次に、大沼公園駅前の街灯も良かったです。(図4)これは地域住民の要望の結果できた街灯です。慶ちゃんが言うには、ムーミンのスナフキンみたいで可愛いそうです。そしてこの街灯は可愛いだけではなく、上に光を漏らすことなく、明るくしたいところだけを照らす、ほぼ適切な照明になっていました。適切な照明環境を住民の意思で選択した好例に見えました。次に近くの町に行ってみますと、光を上と横にしか発さない街灯を発見しました。
(図5、6)図5は北海道が設置したもので、図6がその町が設置したものでした。この2種の街灯をスケッチするのは大変でした。明るすぎて、横からスケッチできないから、真下に行ってスケッチしたのです。街灯の目的は適切に道路を明るく照らすことなのですが、この二種の街灯は上と横を明るく照らしていました。このような街灯が不適切な照明環境をつくっている街灯で、この2種を先頭に99%以上の街灯が不適切な照明環境を造っていました。この不適切な街灯、つまり横、上に光を漏らす街灯の光が夜空を照らすために、星が見えなくなっているのです。おまけに、光が横、上に漏れるために、肝心の道路が暗くなっています。つまり光を横や上に漏らさないようにすると、もっと道路を明るくすることもできるし、星も良く見えるようになるわけです。そして、明るくなる分ワット数を小さくできるから、電気の節約になります。

図2)町内などでよく見られる照明器具。蛍光灯を用いていて、買うときの値段は安いのだが、長い目で見ると、照明器具として失格である。
図1)コブラ型照明

よく見かける街灯だが、光が横方向に漏れるのであまりいい照明器具とは言えない。

図4)大沼公園の駅前に整備された街灯。

完全に優れているとは言えないが、かつてのものに比べれば、ずいぶん改善されている。

図3)フルカットオフ型照明

格好に風情はないが、照明器具としては最高の水準に達している。最前線の街路灯であり、最近国道など、あちこちで見られるようになってきた。

図5)逆スズラン型街路灯

デザインなのか、道路を照らす街灯の役目を忘れてしまっている。誰がこんな照明器具を考えたのだろうか?

図6)まぶしくてスケッチもままならない。
前ページでは街灯を例にしましたが、光の漏れや無駄は街灯だけではなく、様々なところで見られましす。あれは全て、環境省のガイドラインを無視したものです。わずかに国道の照明は改善されて来ており、地方自治体や民間の遅れを感じました。しかし、総合的に見ると、どこもまだまだ立ち遅れていることだけははっきりしています。
少し長くなりますが、続いて光害として最悪の漁り火について論じていきたいと思います。
 漁り火は、イカを釣るために夜間船の上にともる集魚灯の光のことです。その明かりは年々強烈になっていて北海道全土で星が見えなくなっている最も大きな原因です。
このことを調べているところですので途中経過をご報告します。
 まず、その明るさですが、一隻で家庭六十件分の180kwの明るさです。これは100wの電球をちょうど、千八百個分になります。また、街灯に換算すると900本分に相当します。つまり一戸の漁師さんは街灯900個をつけながら漁をしていることになります。この電気代は燃料代に跳ね返ってくるのですが、相当の費用になります。
 今回は、この電球を造っている函館の大手メーカーに電話をかけてお聞きしたことを中心に話しを進めていきます。まず、
「電球の光が横や上に漏れて光の効率が悪いから、電球の上に傘をつけて反射させることはできないのですか?」
    とぼくが質問してみました。
これに対してメーカーさんは「何度も傘をつける研究は重ねているのですが海上の強風の影響で、船の安定性が確保できないことと、熱が傘のところにたまることで断念しているところです」との答え。
 この答えは的をえたものでした。そこで「では、水中電灯を使用することはできませんか?」と質問しました。
すると、その答えですが「もちろんできます。しかし、沿岸漁業で、水中電灯の使用が禁止されているので、イカ漁にも水中電灯を使うことができない状況です」との答え。
「どうして禁止されているのですか?」
と聞きますと、「あまりに効率が良すぎてイカが捕れすぎるのが原因です」とのこと。続けて、メーカーの方のお話し
「もし水中電灯にすると、180kw 使っていたところが5kwですみます。つまり、3%の電気代になります。船の上に電球を灯していると水面で90%の光は乱反射して、海面に入る光は10%も無いんですよ。つまり、イカに向かって遠いところからおお〜いって大声で叫ぶよりは、近くからそっとささやいてあげた方が、いいに決まってますよね」との答え。
 そうなんです。ぼくがこのことを計算してみますと、今まで漁師さんは年間二百万円の電気代を払っているのですが、水中電灯にするとこれが6万円になるわけです。なんと194万円も経費が節約されます。漁師さんにとって夢の水中電灯ということになります。
 現在はデフレ経済でイカの値段は二十年前の1/5になっているそうで、今年から、廃船を考えている漁師さんが大勢いると、メーカーの方の声は深刻です。つまり、現在イカを捕ったらそれだけ赤字になって合わないのだそうです。「電球さえ買えない漁師さんもいるんですよ」と彼の声は寂しくなっていく。それはそうですよね。漁師さんが食えなくなったらメーカーでは電球が売れなくなります。だから、デフレが続く限り、経費を節減するしか無いわけです。これを可能にしてくれるのが夢の水中電灯なのですが、これにストップをかけているのが、農林水産省の規制「イカが捕りすぎになるから、水中電灯を使ってはいけない」
というのです。この規制をちょっと変えてイカの総量規制ということにすれば簡単に解決する。そうするだけで、

@イカの資源が守られる。
A漁師さんの目が悪くならない。
B働く時間が半分以下で、今までより2百万円以上利益が出る。
C働く時間が減るので余裕が出て、人生を有効に使える。
D石油が年間おおざっぱに見ても3万トンくらい節約になる。 
E廃船にならないので、電球メーカーも電球がコンスタントに売れる。
F眩し過ぎるイカ漁の光が無くなるので、函館の夜景が際立ってくる。
G津軽海峡や日本海に昔ながらの風情が戻ってくる。
H星が見えるようになる
I星が見えることで、子供たちの教育環境も復活する。

といったたくさんのメリットを生み出しそうです。星空のためにも漁師さんのためにもイカのためにも、電球のメーカーのためにも、星好きになるかもしれない子供たちのためにも観光客のためにも市民のためにも、海峡を見て泣きたい人にも、みんなのためになりそうです。

いか釣りの漁師さんは街灯900個を船の上でつけながら漁をしている。