写真館通信の世界
★北の食卓から ホッケ
「ホッケ」ともし言われて、知らない人が聞いたらなんだろうと思うかもしれない。しかし、北海道の人なら知らない人はほとんどいない、そんな身近な魚がホッケです。このぼくも当然北海道に来るまでは知らず、よく知っていたアイナメ(関西ではアブラメと言い、北海道ではアブラコと言います)
と区別しませんでした。しかし、しばらくして、よく見ると違うことがわかってきます。
 ほっけはカサゴ目アイナメ科の魚で主に日本では北海道周辺に分布する、北方系の魚です。どうりで、瀬戸内海で育ったぼくが知らないわけです。しかし、同じ科のアイナメ(アブラメ)は瀬戸内海にもいて、真冬になるとアブラメを釣りに出かけます。三十Bを越えると関西では「ポン」と呼んで大変貴重で名誉なことでしたが、ここ北海道ではそれくらいのはあたりまえに釣れて、四十B、五十B級が結構釣れてびっくりします。こんなのが釣れたら瀬戸内海なら大騒ぎになりそうなのが身近な海にごろごろとまるで潜むかのように棲んでいます。当たりは大物ほど小さくて、ぼそぼそという感じできますが合わせてみるとずしっ!ときて安物の道具では手におえず、慶ちゃんの力では上がらなくなってしまいます。ぼくなんかは、わくわくどきどきしてくるんですが、楽しいひとときです。
 さて、ほっけですがとにかくうまい魚です。しかも安い!ぼくたちは塩焼きにして食べるのですが、おいしい上に、そのつるつるとしたさわり心地や見た感じの色合いなどは優しい女性のようです。アイナメとは触った感じが全然違うのです。ところがですよ、なんと失礼なことに、第2次世界大戦前はニシンの卵を食べる害魚として扱われていた上に、まずい魚の代表としてほとんど漁獲されていなかったのです。
それが大戦後の食糧難のときの配給物資として注目されてから漁獲されるようになり、今に至っていると言います。こんな失礼なことがあって良いのでしょうか?こんなにおいしい魚を食べてまずいなんて思える舌を持っている人がぼくには信じられない。
 さて、ほっけの産卵行動についてですが、北海道周辺では秋9月〜12月頃行われて、美しいコバルト色の婚姻色で彩られたオスが縄張りをつくることから始まり、オスはつがいとなるメス以外のものを激しく攻撃して、縄張りの外に追い出してしまう。そして、無事産卵を終えた後も、オスはその場を離れることなく、無事に子供たちがふ化してくるその日まで、海水を口に含んで吹き付けてやりながらやさしく見守っている。このようなオスのやさしい行動はアイナメのオスにも見られアイナメなどは卵を食べに来るメスなども攻撃する。ちょっとつけ加えますと、ほっけ、アイナメともその卵は実に美しいコバルトブルーで、透き通っています。ぼくは種や卵が大好きなのですが、みなさんこの気持ちわかってくれますか?何か未来へ羽ばたく可能性が美しい殻の中にみなぎっていて、そう思うだけで嬉しくなる。スウエーデンの写真家で、人の卵を写している方がいますが、人の卵も大変美しいもののようです。魚も人も樹も花も美しい殻の中から生まれてくるのですね。