写真館通信の世界
●ヒグマとの出会い。
遊楽部岳。この山の近くの道々でヒグマに出会った。
2000年の8月のある晴れた日、ぼくたちは暗い空を求めて函館から50Hほど離れた、今金町の牧場まで行こうとしていました。その途上、夕日があまりにきれいだったので、路肩に車を止めて、沈んでいこうとしている夕日を写そうとしていました。すると、道路の下の熊笹の中からガサガサ音がして、その音は右から左へ動いていきます。慶ちゃんが「何だろうね?」と聞くから、ぼくはたいして気にも止めず「山菜とりのおじさんじゃないか」と、言いました。「だけどあんな深いところを根性の人だなあ」とぼくが言うと、「地元の人ならありうるんじゃない」と慶ちゃん。そうこうしているうちに突然10Eくらい先の路上にヒグマが突然飛び出してきたのです。びっくりして、慶ちゃんは一目散に車の後ろ側に飛び乗りましたが、あんまりにものんきなぼくは、クマが出てきても一瞬信じることができず、飛び出す瞬間を目撃して「タヌキだ!」と叫んだと言います。ところが次の瞬間そのあまりの大きさに、信じられないことだが今目の前にいるのは、熊以外にはないという判断から、ぼくはそれでもご丁寧にカメラをしまいそれから運転席に戻ろうとしました。後で            考えますに自分という人間のあまりの鈍感さに恐れいってしまいました。が、車を止めるところが後10E手前の道だったら、ぼくたちは今こうして写真館通信の原稿を書くことなどできなかったわけです。突然現れたクマは、彼?もびっくりしてアスファルトをひずめで引っかく音を残して再びもと来たクマ笹の中に逃げ込んでくれました。その後、二人で星の撮影にむかったんですが、もう信じられなくて、その話題でもちきりでした。でも、ぼくが思いますに、ヒグマの顔つきってもっと恐いと思ってた。神戸の動物園で見たヒグマはもっとどう猛で、血の気の多い残忍な動物に見えたしかし、今回出会ったヒグマにぼくは残忍さは感じなかった。ただ残った印象は、思ったより優しそうなという印象だった。このクマと出会うほんの10分前ぼくたちは遊楽部岳の山麓に広がる豊かな森を見て、「ぼくがクマだったら知床よりここがいいなあ、だって森があんなに豊かで、気持ちよさそうだもんな」、と言っていた矢先のことだったんです。
北海道南はヒグマの多い所だ。森町にて。