写真館通信の世界
★クロソイ
 「黒ソイ」とぽ〜んと言われて、それは「何のこっちゃ?」と、思う人もいれば、よだれを流す人もいるに違いありません。
 さて、黒ソイですが、ぼくも北海道に来て初めてこの魚と出会いました。つまり、僕が育った瀬戸内海にはいない魚です。
 ソイに似た魚で、カサゴ(関西ではガシラと言った)は瀬戸内海にもいたのですが、カサゴは赤が基調の魚で、口が大きくてごつい感じがする魚でした。黒ソイもカサゴ目の魚だから彼等は親戚ということらしいのですが、詳しく調べていないのでよく分かりません。
 さて、この2者、どんな違いがあってどこが似てるのでしょうか?そんなことがふと頭の中をよぎります。食べてみると、断然黒ソイの方がうまいです。
 塩焼きなどは真鯛以上に上品な味わいがあると思う。そのことは北海道では周知のことなのだろう、市場価値はずば抜けて高い。だが、資源もそんなに豊富というわけではなく我々が晩御飯のおかずに買えるクラスはほとんどが満1才〜2才。(体長25cmくらい)生まれて一年かそこらの魚を食べている。
 この辺から少しでも大きくなると、ぐっと価格が跳ね上がる。満3才になると、35cmになり、高くて庶民にはそう簡単には買えない魚になる。しかし、よく考えてみると、一、二才魚はもう一年海にいるだけで、ぐっと大きく成長し、卵もたくさん生み、そして、市場価値も高くなる。なのだから、小さい魚は捕獲するべきではない、という論理が成り立つのだが、巷で聞く漁師根性というのはそうはいかないらしい。特に自分達が育てたものではない、天然ものに対しては「とれるだけとってやる」根性が働く、と聞いている。
 話はそれたが、このような北国の魚への素朴な疑問に答えてくれる水族館ならほしいなあ、と思う。ところが、先日も函館市がとんでもないところに水産試験場を誘致するといことで、業界から大反対にあっていることを聞いた。
 行政的な都合で魚のいないところに水産試験場を造るというのである。今回白紙に戻った水族館も実は内容的には熱帯魚の飼育が中心のものだった。ここは北国なのである。しかし、計画には北の魚への関心はまるでなかった。そんな自然や魚のことを無視した水族館なんてあってもお金の無駄である。
 そんな水族館計画を側で見ていて、日本の青少年科学館、水族館そのいずれもが、同じ問題を抱えていると思えた。「専門家不在」なのである。水族館という名前の施設を造るプロはいても、自然科学と一般の人との架け橋になるようなプロフェッショナルがいない。偉い学者先生ではなくて、子供達や市民に科学を伝えるそんな想いや夢をもった専門家がいなくてはならないのだ。

 この国では自然や科学を学ぶことは「ただ」という意識があって、プロが育たないのだ。施設を造ると同時に、そこで働く「プロ」を育てて行かないと、必ず行き詰まってしまう。こんな思いのある社会に早く変わってほしいと思う。