写真館通信の世界
街路樹について
 函館の街を歩いてみると、
街路樹がほとんどないことに気づく。
函館に慣れて、東京や神戸を歩いてみると、
街路樹の豊かな緑に驚かされる。
そんな函館で、最近緑の基本計画が策定された。
平成27年度までの長期的な計画だ。
計画は基本的には街に緑を増やそうとするものだ。
その計画の中には街路樹に関する記述がある。そこには
@「今の街路樹は樹種が不統一だから統一しないといけない」
A「市民に愛される都市空間を創出するために、
これからは地域住民の要望に応じた樹種の植栽を検討する必要がある」
とあって、市民アンケートによる好きな街路樹ベストテンが載っている。
このベストテンを書いてみると、
サクラを先頭に、ナナカマド、ツツジ、イチョウ、ライラック、イチイ、ハマナスプラタナス、カエデと続く。
この上位10種はイチイを除いて全部落葉広葉樹で、
秋になると葉を落とすものばかりだ。
その反面「秋期には落ち葉についての苦情が多数寄せられる」
という記述が見られる。
落ち葉といっても色々あるが苦情を寄せる人はどの樹種の落ち葉が気に入らないのだろうか?
この落ち葉に関しての苦情について、少し話してみたい。
 
先日、「函館新道沿いに針葉樹が植えられていて、かなり重傷の針葉樹がたくさんあるけど、
どうしてここに針葉樹を植えたんですか?」と
北海道道路事務所に質問してみた。
すると若いお兄さんで親切に調べてくれた。  
ここが針葉樹になったのは、赤松街道の続きをイメージしたことと、
落ち葉が落ちないことと、冬でも緑の葉っぱがあって寒々しないようにとの理由からだった。
しかし、実際は枯れて悲惨になっている。
これはどういうわけだろう。
ぼくが考えるのに、函館近郊特にアスファルトの上では針葉樹には温かすぎるのではないだろうか?
そもそ函館近郊は針葉樹にとって温かすぎる。
針葉樹はもっと寒いところで優勢の木だ。
冬でも緑の葉があるから…というけど、
針葉樹の葉は新緑の時期を除けば黒い色彩をしている。
ドイツ南部にシュバルツバルト、つまり黒い森というのがあるが、
針葉樹は緑色ではない。
黒い色をしている。
決定的なのは函館新道のこの場所は函館の北の玄関のひとつになるところ。
函館らしさが欲しいところ。
なのに北海道で函館にだけない針葉樹を持ってきてしまった。
設計者は落ち葉の苦情も来るし、良かれと思ってここに針葉樹を植えようと思ったが、
木の生態を無視したのがまずかった。
死んでしまっては何にもならない。
設計者の頭の中には落ち葉の苦情のことが重くのしかかっていたのだろう。
とにかく落ち葉のことで苦情を出す人が多い。
しかし緑の計画のアンケートでは落葉樹がとても好まれている。
上位9種まで落葉樹なのだ。 
これはどういうわけだろう。
 ぼくが考えるのは、苦情を出す人は少数でも彼らはこまめに行政に文句をつける。
しかし、好きな人は落ち葉がすばらしいと行政側に言わない。
「街路樹から落ち葉が落ちてきれいですよ!」という感謝の言葉をかけたことがない。
この感謝の気持ちを行政側に伝えることが必要なのだと思う。
すると行政の人もやってよかったなあという気持ちで一杯になる。
嬉しいと思う。
ぼくたちはこのことを忘れていた。
街の中で街路樹が惨めに縮こまっていたり、
針葉樹を無理して植えようとするのは、
落ち葉の苦情を言う人以上に感謝を言葉にしないぼくたちのせいなのだ。
←函館新道沿いの針葉樹のスケッチ。成長も遅く枯れて脱落している枝が目立つ。それもそのはず、道南でマツ類は元々自生しないのだ。
追記〉先ほど函館道路事務所から回答があって、時間はかかりますがこの先、針葉樹の植栽を中止することを約束してくれました。地域の特性に配慮した植栽の計画を新たに検討するとのことでした。