| ■大雪山について
大雪山とその周辺がこんなにも魅力的なのは、色々と違った環境がひとところに集まって、それらが不思議な関係で結びあっているところにあると思います。
まず、旭岳や黒岳、赤岳から南に白雲岳、忠別岳、化雲岳と続き、トムラウシ山を南の終端にした表大雪の大きな山塊です。黒岳から終点のトムラウシまで歩いて3日も4日もかかる広さの所に車道が一本もなく、公共事業の盛んな日本の中では奇跡的な環境にあります。北海岳から晴れた日に南のトムラウシ山を望むと、ああ、あんな所まで歩くの?と思ったり、こんな広いところが、まだ開発されずに残っていることを嬉しく思ったりします。
この表大雪の高嶺の広がりを中心に北にはニセイカウシュッペや平山のある北大雪と呼ばれる地域、東には石狩岳、ニペソツ、ウペペサンケ、クマネシリ山塊のある東大雪があって、それぞれ、表大雪以上に今は開発されていない自然が残っています。そして、山麓には針広混交林の豊かで、美しい樹海が広がっていて、東大雪の森の中には美しい然別湖や東雲湖があります。ここを越えて、南には十勝平野が広がり、広い十勝平野の向こうに日高山脈の北端を望みます。
また、高層湿原もたくさんあります。沼ノ原、沼ノ平、天女が原、原始が原浮島、雲井が原……嬉しくなるくらい点在しています。
また、表大雪の南には十勝岳連峰が連なり、その麓には美しい美瑛や富良野の丘が広がっています。逆に北側、北大雪山塊に続いて天塩岳、北見富士ウエンシリ岳などの山奥深い世界があって、その奥深さを実感します。この天塩岳の西側が天塩川の源流域にあたり、この山域があの天塩川を造っているわけです。他にも、現在の北海道の中心、石狩平野をつくった石狩川も表大雪の東側に源流域があるし、さらにあの十勝川も表大雪の南を源流域に持っています。このように北海道を代表する三大河川の源流がここ大雪山にあるというのは本当にすごいことだと思います。
このほかにも、大雪の自然は多くの楽しみをプレゼントしてくれます。それはやはり、温泉とおいしい湧き水です。ぼくたちは白金温泉近くの湧き水にぞっこんです。普段よりうまいコーヒーにうまい御飯が炊けます。
温泉もいっぱいあるのですが、近くの旭川は銭湯の多い街。古風な銭湯も魅力です。
自然とは言えないまでも、山麓にある広い牧場もぼくは大好き。美瑛や富良野の丘を広い!と表現する人がいますが、いえいえここや十勝平野のほうがずっと広く感じるでしょう。この、広さはやはり魅力です。
そして、慣れてきて、キャンプ場などをうまく利用できたら、結構長期間安く楽しむことができるところでもあります。お金よりも時間がない人が多いので、なかなか言いにくいことなのですが、キャンプ場はテントを張っても無料の所が多いし、コテージは一泊何人で泊まっても二千円くらいの所が多いから、ホテルの何分の一〜∽分の一の費用で満喫できるのも魅力です。
キャンプ場の利用は味をしめたら確かに止められないのは事実のようですね。友人は無料の山小屋を泊まり歩いて美しいランプの夜を楽しんでいる人がいますが、そんなより自然に近い楽しみ方もあるんですね。
北海道と長いことつき合っているとどうしても大雪との付き合いが多くなっていきます。この付き合いを決定的にしてくれるのが森林限界の上にある高山植物です。標高千五百mを越えると、そこはもう森の木は生きることができません。そこは小さな木と草の世界、高山植物の世界です。北極圏のツンドラ帯と同じ植生です。大雪一帯は広〜い高原状になっていて、そこはもう小さな花、花、花でいっぱいです。くすぐったくなるほど可憐な小さなお花の世界なのです。
■高山植物の植生
では、高山植物は大雪山のどんなところに生えているのでしょうか?このことを簡単に見ていきましょう。
まず、高山植物の生育に大きな影響を与えるのが、冬の北西の季節風と雪です。この二つの要因から分けると下のようになります。
まず風衝地ですが、ここは北西の季節風に吹きさらされるところで、降った雪もたまらずに、吹き飛ばされてしまうので、植物は冬の間も雪の布団をかぶることができず、極低温と、強風にさらされます。おまけに、雪がないので、生育に雪解け水が使えず、乾燥にもさらされます。中でも、風衝砂れき地は冬に凍結、夏に融解が繰り返されるので砂れきが移動しやすく、この移動と凍結融解に耐えられる植物だけが生育できるのです。
他方、なだれ地では多量の積雪によって冬の低温から守られ、生育に融雪水が使われるのですが、その反面雪崩に遭いやすいので、ここでも限られた植物しか生育できません。ここではカラマツソウやトリカブト類の丈の高い草本植物が多くなります。次に、雪田地でも積雪に守られたり、雪解け水を利用できるなどの利点がある反面、雪解けが遅く、生育期間が極端に短かくなるのでたいへんです。雪が多い季節なは、花を咲かせないまま再び雪の下になることもあるそうです。雪田は更に3つに分けられます。季節的湿性の雪田はよく見られるタイプのお花畑で、チングルマやエゾノツガザクラが代表です。持続的湿性の雪田ではイワイチョウやエゾコザクラが生え、最も雪解けが遅くなる雪田底砂れき地はチシマクモマグサくらいしか生えることができません。
■登山について
今まで見てきたように大雪山にはその周辺の樹林帯や丘、湖といった環境に加え、森林限界より上の高山帯という北極圏のツンドラ環境に等しいところがあって、そこは高山植物が咲く一面のお花畑になっています。ここは、車では行くことができない環境なので人間の場合この不安定な二本の足に頼らなくては行けません。おまけに人間といえば、自然の中にいると、最も運動神経の鈍い生き物ですから、車から降りて自然の中にはいると、途端に臆病になります。エゾシカのあのすごい脚力を見たことおありですか?もう、びっくりするばかりですね。 度もあろうかという斜面を、走って登ろうとする彼らの脚力を目の当たりにすると人ってどうしてこんなにも無能なのかといつもぼくは思い知るのです。
でも、どんなに優れた運動神経を持った人でも、エゾシカやクマを越えられるわけありませんから、自分は鈍いといと諦めて、自然の中には入っていこうではありませんか。
ぼくは自然との付き合いもまだ日が浅く、よく分からないことばかりですが、登山になると、普段の運動不足まで手伝って、大変つらいと感じます。しかし大雪山はロープウエーやリフトが通っていたり、山奥深くまで林道が通っていたりするので、比較的楽な気分で登れます。しかも、道南や知床に比べるとクマに出会うところは少なくて、結構気が安まります。おまけに、いったん登ってしまえばあとは平坦な高原歩きだから、体力的には楽になります。しかし、何日もいたいとなると食料やテントなどを多めに持って行かなくてはいけないので、軽量化とコンパクト化が大切になります。ぼくらの場合はこれに撮影機材が加わりますから、軽量、コンパクト化は重要です。
しかし、車から離れ、街から遠ざかって、身一つになるということは貴重な経験です。初めは泊まりを考えずに黒岳や旭岳、赤岳から始めると結構入っていけます。中でも、旭岳はお奨めです。ロープウエーが上までついているので、全くつらい上りがなく、ロープウエーを下りたその瞬間から、一面の花咲く世界にたどり着くことができるからです。ただ、料金はかなりのもんで、二千八百円にもなります。ただ、一般の観光客の人が大勢いるので、山登りの気分にひたりにくいのが難点かなあ。旭岳に行くときは、裾合い平の方に歩くことをお奨めします。そうすれば観光客の人は来ませんから、静かなもんです。でも、あんまり行きすぎて、最終のロープウエーに間に合わないようなことになりませんように。
初めていく季節は、7月の中旬〜下旬がいいです。花の種類が一番多いですから。他には8月もいいし、9月や 月もいいです。9月、 月は紅葉です晴れたら、あまりにすがすがしくて、もう、最高ですよ!
なかなか北海道に来るだけで大変だと思いますが、一度勇気を出してチャレンジすることをお奨めします。
また、山登りにはその道具選びの面白さがあります。山道具が高いと思ったら、ぼくたちは車のことを思い出すことにしています。車や家を買うことに比べたら山道具なんて大したことありません。山に入っていい気持ちになれるし、その道具と共にいられるという幸せもあります。さあ、山登りチャレンジして見ませんか?きっときっといい気持ちになれますよ!
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