写真館通信の世界
『いぼだい』
気持ちのいい午後
市場に行く。
活気あふれた市場の一角
ある魚屋さんでのこと
「おばさん、この魚なんて名前ですか」
「いぼだい」小さな声でおばさん。
「一皿ください」とぼく。
「ありがとさん」と声が響く。
皿の上には
目が黒々として、銀に映えたいぼだいが16匹
16匹で100円。
生き生きとした16匹の魚の命がたったの100円
ぼくの使うフィルムは一枚60円。
ちょっとしたミスで何枚も無駄にしてしまう。
こんなことを思うと
写真を撮ることがわからなくなる。
いぼだいの目を見ながら
そんなことを考える。