写真館通信の世界
★水族館建設とりやめ決定
写真館通信第2号で紹介しました、函館の水族館建設が、先日十一月二十九日正式に中止されました。
 函館に水族館を造るという話は永年の函館市民の夢であったわけです。そこで、函館市はコクドと第3セクターをつくり、函館湾を埋め立てたゴミの島「緑の島」に水族館の建設を進め、二〇〇三年春のオープンを目指していました。しかし、この水族館の建設では採算の観点から巨大な大観覧車を併設することとなり、この大観覧車が景観を破壊するのではないか?という疑問が市民の間から強まっていました。
 ぼくも水族館建設には賛成だったのですが、大観覧車をここに造るのは景観上反対でした。函館の街にはこんなに大きな遊具施設は不似合いだと思うからでした。しかし、賛成派の中には景観がどうなろうと、何が何でも水族館を造りたいという意見がたくさん聞かれました。そして、市民の意見を聞くという名目で、水族館建設に賛成する人ばかりが集められ、何が何でも建設!という方向に進められていきました。しかし、これが一発逆転になった大きな理由は日本政策都市銀行の慎重な姿勢があったからです。 皆さんもご存じの通り、全国各地で第3セクターの企業が破綻していますよね。実はこれらの事業にこの政策都市銀行はたくさんのお金を貸していたのです。ところが、みんな破綻してしまい、貸したお金が帰ってこないで困っていました。そんな状況の中、函館の水族館建設にお金を貸すことにかなり慎重でいて、このことが結局決め手となり、水族館建設は取り止めになったわけです。
 しかし、これで、ほっと安心!というわけにはいかないから後味が悪い。
函館市長によると「2、3年後をめどに再び水族館を造りたい」と、いうのです。つまり、今回の計画は白紙に戻すが、2、3年後コクドを含めた他の企業にも話を持ちかけて、再び水族館を造りたいと市長はしているわけなのです。
「水族館はどうしても造りたい」という市長の姿勢が見えてきます。しかし函館市には水族館を造るお金がない。だから、民間にやってもらいたい。ということになるわけです。しかし、そうすると採算のことしか首をもたげないので、その内容よりも遊ぶ施設の充実が主役になる。そんなこんなで水族館の未来はあまり明るいと言いがたいように見える。
 しかし、ここで皆が忘れているのは我慢するという気持ちなのだろう。水族館が欲しいのなら、無駄づかいせずにお金をためて、お金がたまってから造ればいいのになあとぼくは思う。そして、もし早く欲しいのなら小さなもので我慢するほかないだろうに、と思う。あの手の人たちと話をしていると「何か大きなことをしたい」という思いでいっぱいになっているようだ。小さなこと自分達の背丈くらいのことから始めていこうという順序だった方法論はどこにもない。誰しも自分の家が欲しいだろう。だけど、そう簡単に手に入れられない。そして、本当に欲しかったら生活を切り詰めても、まずお金をためるだろう。そして、もし、お金がたまらなかったら、いつまでも小さくてぼろのままだ。何も知らない人はチビボロとけなすだろう。しかし、人が懸命に努力しても大きく立派になれないこともあるものだ。大切なのは大きくて立派なものがそこにあることではなくて、小さくてもボロくても、自分達の想いをその中に詰め込むことだ。表面しか見ない人は、馬鹿にするだろうが、その想いの大きさに共感してくれる人がいるはずだ。そう、信じて、精一杯やるしかあるまい。