写真館通信の世界
       ★とっとこ村 にわとりの天国〜北海道木古内町〜
とっとこ村入り口
とっとこ村風景
大騒ぎ
可愛い〜!
「とっとこ村」可愛い名前ですね。
いったいどんなとこなんでしょうね。
勇気を出して訪ねてまいりました。
 とっとこ村は函館から西に40H、木古内町という津軽海峡に面した街にあります。名前からどんなところか想像できますか?実は、とっとこ、とっとこ走り回っているのは、にわとりさんなのでした。まず、行ってみると、庭中、どんちゃん騒ぎです。訪ねていっていきなり、一面のにわとりに圧倒されてしまいます。聞いてみると、全部で七百匹ほどいるそうだ。しばらくぼくたちは何がなんだかよくわからなかった。しかし、落ちついてよく見るとこれがほんとの放し飼いの養鶏場?の様子なんだなあと感じてくる。
 ぼくたちがここに来たわけは、今年から、二週間に一度、1パックの卵を配達してもらうようになったからだ。以前から間接的にとっとこ村の卵をいただいて、他の卵と比較しながら食べていた。すると、特に目玉焼きにして食べたときに、全く違っていることを痛感した。
 他の卵は食べ物というよりは、どこかプラスチック的な質感があるが、とっとこ村の卵、特に白味にはこれぞ食べ物なのだという質感があった。
 ぼくは小さい頃から卵の特に白みのあのプラスチック的な質感が嫌いだった。しかし、生まれて初めて、食べ物としてうまいと実感させてくれた卵、それをつくっているところとはどんなところだろう、と思い続けていたのである。そして、その思いを写真館通信に載せようという思いに勇気づけらて、今日果たしてきた。
 

 行ったその途端、ぼくの思いは完全に満たされた。「これはすごい!うまいにきまっているじゃないか!」
行った途端にそんな思いが稲妻のように体全体を駆け巡った。
 食卓に置いて、とっとこ村の卵と他の卵を並べて見る。どう見ても、どちらも卵は卵にしか見えない。同じにしか見えないのだ。しかし、これが食べてみるとまるで違う。
 他の卵はどれだけ安く、楽をして「卵に見えるもの」をつくれないかと、造ったものなのだろう。しかし、とっとこ村の卵は水谷夫人の夢とどんちゃん騒ぎが作らせたものだ。昔からやってきたのと同じように、楽しく卵を作っている。「卵に見えるだけの卵」をつくっているのではなく、ただ「卵」を作っている。ここで、誤解のないようにつけ加えるとしたら、昔の農村では、栄養を補うために数羽のにわとりを庭で飼っていた、これが原風景だとする示唆もある。しかし、社会が都市農村と分離され、農業や養鶏などは単一的大量生産をするようにしむけられてきた現在、この主張はあまりに幻想的なノスタルジアでしかない。
 確かに理想はそうなのかもしれないが、時代が移り変わっていく中で、理想の形態が変化してもなんら問題はない。とっとこ村の庭を走り回っているにわとり、そして庭のあちこちで無造作に生まれた卵を見るとき、今の時代にあってこれを理想だと呼ばないとしたら、いったい何を理想と呼ぶのだろうか!
 

 にわとりたちの家は水谷さんのご主人が古材を集めて造ったものだ。行政が造らせる豪華な施設を見慣れた人の目には、確かにぼろい小屋だと映るかもしれない。しかし、鉄筋で造られた他の養鶏場の卵工場を見るがいい。ニワトリたちにとって、あれは牢屋であって決して家ではない。断じて家ではない。あの虐待ぶりには目を覆うものがある。他の養鶏会社は言う、「うちの鶏舎には窓がない。それゆえに、ニワトリは衛生的に管理できるのだ!」と。何をたわけたことを言うのか。
 そういうおまえがニワトリたちに代わって、鶏舎に入り、窓のない、すなわち風もお日様もない動けない棚の上に座っていれば良いではないか!それを衛生的!と言うのなら、おまえが衛生的な生活をやって見ろ!と言うのだ。
 ところがとっとこ村のおじさんがつくったぼろい小屋は、にわとりたちの家なのだ。雨が降ればにわとりたちは家に戻り、夜が来れば家に帰って眠る。とっとこ村のにわとりは家に住んでいる!とっとこ村に5分いればこの決定的な違いが誰の目にもわかるだろう。
 あたかも、放し飼いのにわとりから生まれた卵ですよ、と言って、売られている高価な卵を見かける。しかし、放し飼いされているところが、立派な屋根付きのコンクリート製の工場のような所だったりして、がっかりすることがある。放し飼いにしているのは確かなんだけど、でもなあ?といつもぼくは思う。そんなにわとりたちに比べ、何ととっとこ村のにわとりは幸せなんだろうと思う。ぼろい小屋だけど、ここが世界中で一番幸せなところなのだと彼女たちは知っているのだろうか!
 

 その彼女たち、なんとも個性的で、食べ物の好みも違う。食べ物の好みが違うと黄身の色も違ってくるらしい。大根などの葉っぱを食べると黄身が赤みを増したり、春と秋で黄身の色が違うそうだ。ある時、白い黄身の卵が生まれたそうな。いったい彼女は何を食べていたのか?わからないそうだ。しかし、よくよく見てみると、確かに一羽一羽食べているものが違うかもしれない。とにかく鳥たちが入り乱れ、大騒ぎの状態がたまらなくいい。この宇宙を支配する原理はいつもエントロピー(乱雑さ)を増大させる方向に動く。このエントロピーの増大原理を無理に押さえつけようとしたり、秩序立てようとしたらたいへんな労力や無理がかかる。とっとこ村のやり方には力を使って秩序立てようとする無理がない。鳥一匹一匹が宇宙の原理に従って伸び伸びしている。少々大げさかもしれないが大切なことだと思う。この宇宙を支配するのは乱雑さと、単純という矛盾した原理なのだ。このはざまにぼくたちは揺れ動き、バランスをとりながら生きているのだろう。これこそが生きることの醍醐味なのである。

〈追記〉 

ぼくはよく風邪をひくのですが、風邪をひくと、とっとこの卵に函館の市二郎の納豆とネギを入れたものを食べます。すると、回復することがしばしばあります。でも、今回訪ねて、その御礼は恥ずかしくて言えませんでしたが、どうやって卵が生まれているのか見れて良かったです。みなさんも是非一度、食べてみてください。でも、残念ながら函館とその近郊の人しか配達してもらえないのです。ごめんなさい。
函館の人は、下記の電話に電話をかけて交渉すると配達してくれます。ぼくたちなんかは、その場その場で払うのはめんどうなので、一年分(24回)まとめて払いました。アトピーなんかでお困りのお子さまなんかには最適ですよ。1パック10個で配達してくれて350円です。

〒049ー0452 北海道上磯郡木古内町字建川137の2  

              とっとこ村      エ01392・2・4785      

水谷夫人 

夢と大きな病気をバネにしてとっとこ村は始まった。とっとこ村を始める前、彼女は25年間会社員だった。