写真館通信の世界
★寺本豆腐店
最近、体のことを思ってお豆腐におしょうゆをかけないで食べるようにした。塩分のとりすぎになるから、控えなさいという、慶ちゃんの命令だ。しかし、最初のうちはしょうゆ好きの僕としては非常に寂しかったが、時間と共にしょうゆをかけないと、豆腐そのものの味が分かってくることに気がつく。そう、うまい豆腐はしょうゆをかけなくてもじゅうぶんうまくって、うまくない豆腐はじょうゆがないと食べられない。ということは、しょうゆがないとそれだけうまい豆腐が食べたくなるわけです。
 以前から旅先のスーパーでは必ず地元のおいしそうな納豆と豆腐を食べることを楽しんでいたわけですが、しょうゆをかけなくってからはいっそうその気持ちが強くなってきました。しかも、豆腐と納豆は案外そこに行かないと食べられないものが多いもので、つまり地方色を強く感じることができる食べ物でもあるわけです。牛乳もある程度地方色はありますが、豆腐や納豆ほどではないように思います。
 もちろん函館にいるときもおいしい豆腐を食べたいという気持ちは強く、日々、機会あるごとに探し歩きます。その途上、松風町で、ある手作り豆腐の店を見つけます。さっそく、店に入り、豆腐を注文します。すると、予想以上に高く(一丁二百円だったと思う)びっくりしましたが、後には引けません。それで帰って一口食べてみると、それはおいしいものでした。おいしいと感じるのは人によって違うわけですが、ぼくがおいしいと言っているのは豆の甘さを感じるような豆腐のことです。久しぶりに出会ったうまい豆腐に舌鼓をうちながら、ぼくの田舎の豆腐のことを思い出します。
 豆腐と言えば僕の田舎の徳島県半田町にも田楽豆腐をつくる店がありました。その豆腐は縄で縛って買ってくることができるほど固い豆腐で、これに味噌をつけて炭で焼いて食べるわけですが、これにアマゴやアユの塩焼きを添えてもらうと、もう、最高なわけです。ついでに我が田舎の半田町は半田そうめんという太いそうめんが有名なところで、小さい頃ぼくはこのそうめんが嫌いでしたが、最近はとても好きになりました。そうめんでは揖保の糸と呼ばれる、細いそうめんが有名ですが、個人的には断然、半田そうめんの太いそうめんの方がうまいと思うのですが、この半田そうめん、意外と全国区では手に入らないようです。ですから四国を通りかかったときには、覚えていて食べてみて下さい。
 このように意外と日本の古くからある食べ物はまだまだ地域色があって、旅の一つの楽しみになります。もし、そんな食べ物たちと出会いたいとき、全国展開のスーパーよりは地方のスーパーに入った方が確率高く出会えるかと思います。旅先の楽しみに、どうぞ入れておいて下さい。