セットポストカードの世界
12枚組 700円
1993年初版のポストカード集で丘のうえの小さな写真館の創作活動の原点となるポストカード集です。
1993年当時、この作品集を1000冊印刷するだけでも、丘のうえの小さな写真館にとっては並大抵ではなく、死にものぐるいで他で働いて制作費用を捻出しました。
 しかし、印刷会社がフィルムを紛失したため、これ以上増版することができないので、残り100冊となった『函館の風のの中で』は貴重なものになってしまった。
 こうして、ポストカード集『函館の風のの中で』は増版できませんが、函館の風の中…という着想はあくまで丘のうえの小さな写真館の原点の発想であるため、次には形を変えて出版したいと強く思っているところです。
1)大三坂の消火栓 3)残れ燈 4)バラの花咲く白い家
2)修道院の午後
7)あじさい咲く外人墓地
5)教会と細月 6)花咲く丘のむこうに
8)ポストのある風景
9)旧桟橋の夜明け 10)暮れるトラピスチヌ修道院
12)冬の函館夜景
11)窓明かり

『函館の風の中で』
風は旅人である。
しかし、いつどこから吹いてきて
どこへ吹きすぐゆくか、誰も知らない。
私たちもまた、どこからここに来て
どこに行くのか、誰も知らない。
しかし、今ここで確かなことは
私たちは人を愛し、夢を追い、つらいことに涙を流し
また喜びに震えている。
そしていつか静かにどこかに姿を消していく。
私たちはどこか風と似ている。
ああ、もし私たちが風なのだとしたら
今、どこにむかって吹きすぎようとしているのだろうか?
『函館の風の中で』冊子から
函館に巡る思いと吹きゆく風を感じて…

 前略……その対比に少し悩みましたが、そばに咲いていた花が風に揺れているのを見て、ぼくはもう考えることをよそうと思いました。知らないでいいことがこの世にはあります。風に揺れる花は僕にそう教えてくれます。
「風が吹くと私は揺れる。するとあなたは私に目を止めて下さる。すると私はあなたの心にほんの少しあいた小さな隙間に私という小さな種子を飛ばすことができます」僕はその時はっと気が付きます。長いこと「幸せって何だろう」と悩んできました。幸せというのは心の隙間に一本の小さな花の種子を植えることなのだと僕はそのことに気づいたとき、フクロウさんたちのことも何となく分かった気がしました。だけど僕は誰にも本当のフクロウさんのことを聴こうと思いません。これでいいのです。それから僕は風のように生きたいと思うようになりました……。