ここは函館の郊外の修道院。 修道院の丘のうえにはいつの頃からか 一本の栗の木がある。 今では栗の木もすっかり葉を落とし、 深い深い雪に閉ざされて眠りについている。 明かりといえば 二人の雪だるまが灯すランプの灯と たゆたゆと降る雪の明かりだけがかすかに灯っている。 この神聖な世界が ただ愛と静寂だけで満たされていた おぼろげな冬の宵のことである。