館 カレンダー『北国の小さな物語』
★2001年 3月
『新しい時の訪れ』

 長い冬が終わって
日々ゆっくりと雪が消えていく。
消えたすぐのところはまだほんのり湿っているのに
たちまち春のお日様に照らされて
ふかふかの落ち葉のベッドに変わっていく。
そんな落ち葉のベッドに横たわって
春の日差しを全身に受けてみると
落ち葉のベッドはどんな高級な羽根布団よりふわふわ柔らかくて
春のお日様の光ははどんなに立派な暖炉よりも暖かい。
ああ、これが春のぬくもり、
愛しい人の胸のぬくもり。

【ヒグマについて】
 北海道の南に今金という町があって、その郊外の道道であまりに夕日がきれいだったので、夕日を写していました。するとその時、道路下の薮ががさがさ音をたて、それがゆっくりと右から左へ移動していきました。ぼくたちは「山菜とりの人かなあ」くらいにしか考えませんでしたが、突如笹薮の中から大きなヒグマが道路に飛び出してきたのです。びっくりしてぼくたちは車に飛び乗り、熊の方もくるっと向きを変えて大慌てで笹薮の中へと飛び込んでくれました。その時まではヒグマに単なる“恐れ”しか抱いていませんでしたが、あれ以来それが“畏怖”に変わりました。それに動物園で見る、ただどう猛なだけのものではなくて、何かしらの優しさを感じたのはどういうわけでしょうか。そしてヒグマという大きな存在を優しく包む北海道の自然に対しても見る目が変わったというわけです。