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丘のうえの小さな写真館 北国通信の世界 日本列島縦断記
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2005年初夏。
僕たちは日本の風土、気候を身体で感じるために
爽やかな初夏の風が吹く北海道をあとにして、日本列島を北から南へ縦断する旅に出ました。
丘のうえの小さな写真館にとって、
この旅は初めて行う本格的な日本列島縦断の旅であり、
全行程7400km、38日間に及ぶものでした。
この列島縦断の旅の記録をこの度一冊にまとめた冊子を創りましたので、
もし一読して下さる方がおられましたら一冊800円でお作りいたしますので、
丘のうえの小さな写真館までお知らせ下さい。よろしくお願いいたします。
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『日本列島縦断記』インクジェットカラーA5判68ページ。
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『日本列島縦断記』冒頭
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日本列島縦断の旅
ー暑熱と湿潤の合一する世界へー
山下正樹
Masaki Yamashita
暑熱と湿潤、その合一こそ
日本列島の風土を特徴づけている。
そして、それはこの日本に豊穣の実りを約束するが
その反極で、夏草の旺盛な繁栄を促し
その結果、我々の祖先は
この夏草と不断の戦いを強いられ、
結果、その農業労働の多忙さゆえに、過酷と貧困のどん底へと貶められてきた。
そうした厳しい風土のために、
我々の精神は自然への「忍従」として規定され
それが我らの血肉となり、
我らの精神構造の底流をなすに至る。
こうした日本の風土を
特に暑熱と湿潤の合一が顕著に見られる梅雨のその時期に
列島を北から南に縦断することこそ
日本列島を理解し、我らの精神構造を規定する
日本の風土を理解できるまたとない機会であると判断し
僕たちは爽やかな北海道の初夏の風に送られて
南へと旅立ったのである。
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青森県津軽半島の小さな漁港。旅は、津軽半島から始まる。
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旅立ちー6月6日ー
和辻哲郎の『風土』という書物の第一章に「風土は単なる自然環境ではなく、人間の血肉を構成する…」とある。
ところが、僕は何もかもが急速に変遷し、その風土が自分の血肉に成り行く前に変質を遂げるという時代に生まれた。それゆえに、僕に限らず多くの人は故郷の風土を失い、そして失望し、厭世的にならざるをえない状況に追い込まれている。そんな中で育った僕は日本という国に生まれながらも、自分が日本人に成り切れず、曖昧な存在のまま浮遊していることに日頃からいらだちを感じていた。しかし、そんな浮遊する自分であるがゆえにできることがあると思うところがあり、その思念を試すためにこの旅に出発することにした。
それで、数年前より準備を進め、じっくりと日本の風土に向き合う旅に出る機会をじっと待っていた。そしてようやくこの2005年6月から7月にかけて、ついにそれを実行にこぎつけたのである。
写真的には、白黒でこの日本の風土を格調高く描くことを第一義の目的とした。そのため僕はカラーフィルム以外に白黒ブローニー120サイズのフィルム、約400本をこの旅のために用意し、6月6日夕刻、青森港に向けて出立。40日間に及ぶ日本列島縦断の旅を開始した。
当日は、予定通り津軽半島一周のため、陸奥湾沿いに北上する。冷たい高気圧の雲が覆い被さった陸奥湾を車窓右に眺めながら進む。国道280号線を走るが、蓬田村(よもぎだむら)あたりまで来ると、ようやく陸奥湾が望めるようになる。途上、無数とも言える小さな川を越える。蟹田町(かにたちょう)に入った頃、すでにあたりは薄暗くなっていたが、その薄明かりの中、北海道では見ることができない舟だまりに遭遇。僕は真っ暗になるまでその舟だまりを写した。その夜は、蓬田村村営の牧場で眠る。何度味わってもあまり好きになれない旅の夜の始まりである。見渡す限り暗い大地が続き、その果てに白く光った雲が海に低く垂れ込め、夜遅くまで津軽半島の夜闇の中にカエルの鳴き声が細々と響いていた。
津軽半島を一周するー6月7日ー
津軽半島一周の日である。朝早くから、昨夕写した舟だまりをもう一度写す。その後陸奥湾に沿って北上、平舘(たいらだて)を過ぎ、津軽半島のピークの一つにある袰月海岸(ほろづきかいがん)を楽しみに走った。しかし、その名のわりにたいしたことはなく、言われなければ注意もしないような海岸線が続くだけだった。しかし、袰月海岸を過ぎ、半島の二つのピークに挟まれた三厩湾(みんまやわん)に入り、三厩村(みんまやむら)の海岸線を竜飛崎に向かっている途上では、何度も心引かれる風景と出会い、立ち止まった。特に三厩村の宇鉄にある漁港はなかなかで、ある老漁師が自分の舟にペンキをていねいに塗り重ねている姿が印象的だった。また、三厩村 尻神にある小さな漁港でワカメの選別をしていた老漁師の姿も忘れられない。目立たぬが、昔ながらの小さくて素朴な漁港は心に響く。北海道では昔ながらの漁港とはほとんど出会えなくなっているから、こういった素朴な漁港との出会いは、ことのほか嬉しい。ただ東北でも昔ながらの素朴な漁港との…
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