の世界
76 ひまわりの花咲く丘 20028
ひまわりの花咲く丘

-北海道 名寄市-

 少し前から「北海道のひまわりの写真が見てみたい」というお話があったので、北海道の8月はちょうどひまわりの季節。今月はひまわりの作品です。
 また、他のお客様から「もっとさわやかな北国の夏の風景を見せてほしい」というお話もよくあります。
 僕の作品にそのような作品が少ないことは間違いがありません。
「さわやかな作品」というと、晴れていて、どこまでも見通せるような感じのものだと想うのですが、このことについて少し話します。
 

 風景には大きく分けて「晴れた日」「曇りの日」「雨の日」とあると思います。
晴れた日は青空や白い雲が広がって、さわやかな作品が作れる日です。しかし、その反面、影が濃くできて、細部まで見えなくなります。曇りの日はさわやかではありませんが、対象の細部がよく見えてきます。雨の日は、目の前の風景の色を塗り替えたように見えて来て、対象が色濃くなり細部までよく見えるようになります。
 そこで、撮影の場合、晴れた日は広角レンズをつけておおざっぱに風景をつかむことが多くなります。曇りの日や雨の日は目の前の細部や色の違いがよく見えるので、じっとにらんで、望遠系のレンズでの撮影が多くなります。
 撮影の面白さからいうと断然曇りの日や雨の日が面白いわけです。じっくり時間をかけて対象が見ていられるからでしょうね。このような事情と合わせて、北国の色彩の微妙さを出したいという思いから、始めた頃は曇りの日に撮影に出かけることが多かったわけです。
 しかし、5、6年くらい前から晴れた、さわやかな作品も作りたくなってきます。微妙な色を再現するのではなく、全体にさわやかな作品です。
「さわやかな作品」と、再三言っていますが、これを明るさに置き換えた時、撮影者の性格によって随分変わってくると思います。
 

 例えば、大地が緑、空が青だとします。実際にその両者の「明るさ」を露出計で測ってみると、断然緑の方が暗く、青空の方が明るいものです。この青と緑の明るさの違いは大きな問題です。どちらを基準にするのか?です。
 ここで、この緑と青の明るさの差を少しでも少なくしてくれるのが、偏光フィルターです。
偏光フィルターは暗いサングラスのようなもので、偏光フィルターをレンズにつけて写そうとすると、暗くてまるで、夜のようになります。しかし、このフィルターをかけることで確実に青と緑の明るさの差を減らすことができるのです。
 それでも、完全に同じにはなりませんから、露出を青空と緑のどちらに合わせるのか?という最終的な問題が残り、そこに撮影者の違いが出てきます。僕の場合、もっぱら緑を基準にして青空を明るく写します。そのことでさわやかな作品を作ります。しかし、青空に露出を合わせる人も大勢います。このどちらにするのかは、本人しだいということなのでしょうか。
 

 このような撮影上の問題はもちろん人間の目との違いから来ているわけです。人間の目はオートで瞬時に明るさを補正していますが、写真にはそんなことができないのです。
さて、このような明るさの違いは、今月のひまわりの作品を写す時にも問題になります。ひまわりのような黄色は難しい色で、露出計で測った通りに写したら、必ず目で見るより暗く写ってしまいます。そこで、この作品のような風景を写す場合、確実なのは青空の明るさを測って、その基準でもう一度ひまわりなどの黄色を測る方法です。そしてその時、どのくらいの範囲に入っているかを確認し、これで写していいか、悪いかを決めます。つまり、白や黒と黄いった極端な反射率をもった色彩をできるだけさけて、露出を決めることが大切なのです。先ほど反射率という話をしましたが、ものは太陽の光を反射して見えていることはいうまでもありませんよね。この世の中の太陽を除く全てのものは、反射した光です。そして、反射させる光の質の違いが色となり量の違いが、明るさ暗さになるのでしょう。このことは写真の場合とても大切なことです。写真家は毎日、光の質と量を測り続けているわけで、その経験を通して、独自の世界へと発展させていきます。
 

 そのような光の量の基準になる露出計は反射率18%のグレー色を基準に調整されていて、その他の反射率を持った色彩に対しては、撮影者が補正をしなくてはなりません。このあたりどんな補正をかけるのか?撮影者の腕次第です。自動露出のついたカメラがあることはご存知でしょうが、あれも、このグレー18%の反射光を基準にしているだけで、決して色による反射率の違いを考慮していません。そのため、オートというのは名ばかりで、正確にはオートでは写すことはできません。しかし、おおむねこのオート露出のついたカメラは使い勝手がよくだいたいの風景や人物には使えるようになっています。なぜなら、青空や人の肌色の反射率はグレー18%に近いためです。しかし、もっと肌色が白い女性などを写す場合、オートで写すと実際よりも暗く写ってしまいます。これでは、せっかくの白い肌が台無しなので、撮影者が補正をかけてやらないといけないのです。
 その他、写真の場合オートフォーカスという機能を持ったカメラが最近多いです。これも、正確にはオートというのは名ばかりです。だいたいのピントは出せるので便利なのですが、「ここにピンとを合わせたい!」という撮影者の意志は反映されません。しかし、決定的瞬間を写すような動物写真やスポーツ写真には必要だと思います。
 しかし、じっくりとピント位置を考えることができるような場合「どこにピントを合わせるのか」というのは写真の究極的な面白さの一つになります。
 

 写真レンズの場合、ピント合わせは、ヘリコイドによる微妙なレンズの出し入れによるもので、このヘリコイドのなめらかさなどがレンズメーカーの腕の見せ所になります。また、ピントの合う範囲を決めているのは、レンズについた絞りの役目です。絞りというのは人間の目で言うと、瞳のまわりの茶色いところ(虹彩)です。 人間は明るいところに行くと虹彩を閉じて瞳を小さくし、暗いところに行くと虹彩を開いて瞳を大きくします。この原理を使っているのがカメラのレンズというわけです。人が虹彩ですることをカメラでは「絞り」でやっているわけです。この絞りが、カメラの場合、ピントの合う範囲を決めています。例えば、絞りをいっぱい開けてやると、ピントの合う範囲は極端に狭くなって、ほんの数ミリになってしまうこともあるし、逆に絞ると数十cm〜無限大までピントが合うような変化をつけることができるわけです。この絞りには、1.4、2.0、2.8、4.0……といった数値があって、数字が小さくなればピントの合う範囲は狭くなり、逆に数字が大きくなるとピントの合う範囲は広くなります。この違いを利用して作品をつくっていくのが実は写真の一番面白いところで、コンパクトカメラでは味わえない面白さなのです。実はコンパクトカメラ(使い捨てカメラ含め)では この絞りを11くらいに固定して作っており、3mくらいに最良のピントが来るようにしています。しかしこのことは無限大のピントは捨てていることで、コンパクトカメラで風景を写した場合、絶対にピントは来ることはないわけです。 次に、ひまわりの作品について話してみます。

まず、北海道で広大なひまわり畑を見るためには、今の所、珍しく道北に行くことになります。美瑛、富良野…と思いがちですが、ひまわりなら道北の名寄(なよろ)郊外と北竜町に行くと見ることができます。季節は8月の中旬頃で、この頃はひまわりだけではなく、そばの花の時期でもあり、雪が積もったように咲くそばの花も美しいものです。また、この頃は牧草ロールがあちこちで見られる時期です。最近は、ラップに包むようになってしまい、風景としては面白くありません。しかし、この時期は牛の餌用ではないロールもあるらしく、結構ラップをかけないロールもよく転がっているので、見る目を楽しませてくれることもあります。聞くところによると、牛のベッド用の干し草を作る時期だとか…。このことは酪農研修生の友人に聞いたことなのではっきりしません。いつか、調べる機会があったら、調べたいと思っています。
 

 と、書いてみて…8月の道北、ひまわり、そば、ロール…とあるのですが、8月の北海道はもう何となく寂し気です。8月も終わる頃になると、すすきの穂が風になびくようになり、萩の花も咲き始めます。そして、空が高くなっていくのですね。そして、秋の風が吹いてきます。ところで、皆さんは「秋の風」って言って、「ああ」ってお思いになりますか?言葉では言えないのですが、ある時を境に夏の風から秋の風に変わります。しいて言うと、秋になると樹木の葉は水分を失い、風が吹くごとにカサカサ、カサカサ…と乾いた音を伝えるようになります。そして、妙に冷たく感じられて、妙に透明なんです。つまり、秋の風=透明な乾いた風?と言ってみたんですが、いかがでしょうか?
 こんなことを話していてやはり思うことは、8月の中旬にひまわりの花が咲いて、その半月後には秋の風を感じ始めるという北国の不可思議な感覚なんですね。日本の暦ともずいぶんずれるこの季節感の違いは何とも異国的な土地を思わせられます。
 

 それにしても、今年は8月に入っても雨続きで、ほとんど晴れることがありません。ほとんど仕事にならず、結局例年の1/100の撮影しかこなせない有り様です。8月こそ!と張り切っていたのに見事に裏切られました。実は、今年、僕の撮影枚数が10万枚に達することを祝して、カレンダーの時期に『10万枚撮影おめでとうキャンペーン!』を計画していたんです。しかし、なんと、これが実現されず、来年に持ち越しということになってしまいました。僕にとってはこの10万枚撮影した。というのはどんな節目よりも大切な節目になります。あまり、節目を気にしない僕が唯一大切に思う目標であったわけです。この記念日に皆さんに感謝の気持ちを返すことは当然のことで、どんな形にする?と今年初めの頃話していたのです。しかし、まさか、実現されないことになるとは…予想もしませんでした。申しわけありませんが、10万枚達成記念は来年に持ち越しです!すみませんでした。
撮影とはうって変わってカレンダーだけは順調に完成にむかっています。今年は新しいポストカードも16作品合わせて作りました。たったの16作品ですよ!!候補に数百枚くらい出しましたが、その中から16枚に絞るのは大変な苦労です。これ落とすの…………?!悔し涙の連続です。なんと予算には限りがあるのです。自分の限界を感じる時です。本当は32作品くらい出したかったんだけれど、お金が足りなかった…。 でも、最初は32作品用意してたんです。ポストカードの場合、一度の印刷で5万枚以下では作れないんです。これが32作品となると10万枚作ることになります。 こんなに作らないとポストカードを作れないというのが寂しいですね。せめて、3万枚が1ロットならたちうちもできるんだけど。……………そんなわけで、今年のカレンダー時期のご案内は、新しいポストカードと2003年カレンダーの御案内になります。御期待下さい!!