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丘のうえの小さな写真館 北国通信の世界
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第94号 北国通信『真冬のはずなのに』 2004年2月
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噴火湾に昇る満月
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夕 日
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津軽海峡、福島町にて、『ノリ干す漁婦』
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●No1
1月の末頃、大雪の日が続き、今年の冬は本格的な寒さが来るのかな?と思って、覚悟を決めて2月を迎えたが、寒かったのは最初の内だけで、中旬を過ぎた頃からその寒さは一段落してしまった。しかも、下旬近くには大雨が降って、大風が吹いて、せっかくたまった雪を溶かしてしまった。その結果、たっぷりあった、雪のストックはすっかり少なくなり、庭では地面が出るほどになってしまった。市内などに行けば、特に顕著で、寒いだけで、冬の気配が感じられない。本当に、どうしてこんなことになるのだろう。過ごしやすいのはいいのだが、こんな冬の真ん中頃に、春の気配を感じてもやはり有り難さはない。気候と暦はやはり一致していてほしいと切に願うばかりだ。
そんな中、僕はというと、1月中に総合カタログを作り終えたので、しばらくは一年分のカタログの印刷をしていた。それが終わった後、僕はどうしてもやる必要があった撮影機材の見直しを開始した。
その端緒となったのは大雪の縦走撮影の折りに、ニコンの最新のレンズであるAF-Sニッコール28-70mmf2.8ED
を持っていったことに始まる。つまり『ニコンの画質問題』です。AF-Sニッコール28-70mmf2.8EDというレンズはあのニコンが他のメーカーから遅れること3年、万を期して出してきたレンズで、優秀なレンズであると定評があった。それで、僕は大雪縦走の直前にこれを中古で購入し、大雪に持っていった。しかし、結果はとても良いと言えるものではなかったのである。定価は何と22万円。EDガラスを2枚、ガラスモールド非球面レンズを一枚目に採用するなど、文句のつけようのない光学系で、自分が今まで使っていたトキナー28-70mmf2.8とは格段の違いだった。確かに、この両者の差はファインダーをのぞいただけでも明らかで、写すまでもなくわかるものである。特に、逆光時、ニコンの最新のコーティングはその威力を発揮してくれる。しかし、実際に写してみて、半切にプリントしてみると、その画質は思った以上に悪い。このことが明らかになったのは秋の写真展の時で、それ以来色々と調べ始めたのである。
まず、考えられることは色々とあった。まず、|f16まで絞って撮影したことにより、回折の影響で画質が劣化した。}カメラのミラーショックではないか?~ズームレンズはいくら優秀な光学系を使ったとしても、しょせんこんなものだろう。ジッツオのG1228カーボン三脚はぶれやすい。<jコンレンズの画質そのものの問題ではないか?cvリント時に伸ばしぼけをしたのではないか?また、引き伸ばしレンズの収差が出たのではないか?などである。
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問題になっているニコンの最新の28-70mmf2.8EDレンズ。
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現在は|〜bフ原因を特定している最中で、いまだに未解決な点が多く、もう少し時間がかかりそうです。わかり次第報告したいと思っています。 次に、これまた大雪の撮影に生じた問題で『もっと軽量で小さいな露出計を探せ!』ということでした。露出計というのは、被写体の明るさを計るもので、これをもとに、シャッタースピードと絞り値を決めています。たいていは、カメラに付いていて、最近はカメラ任せでできるものがほとんどですが、自分が使っているカメラには露出計が付いていないために、別途用意しないといけないのです。今までの露出計は大きいことを除けば非常に良くできていて、絶対の信頼があり、僕の撮影システムの基準をなす大切なものですから、これを見直すことはそうたやすいことではありませんでした。それでも、あきらめずに調べ回っていたときに、100円で買って置いていた露出計の本の中の一文に「ゼロメソッドで…云々」という説明文があり、これが目に留まりました。ゼロメソッドつまりゼロ点を合わせて露出を計ることですが、これなら使えるんじゃないか?と思いましてしばらく深く熟考しました。その結果、一か八かということで、全国の中古カメラ店にファックスを流し、目星をつけた露出計を探し出します。これが次の写真にある、ゴッセン プロフィシックスという露出計です。 |
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●No2
ゴッセンというとドイツの露出計専門のメーカーで、たくさんの種類の露出計を出しており、僕も良く知っていました。しかし、使い方が良くわからなかったために、今まで無視して来たというわけです。この露出計は、左側面のボタンを押しながら先端部を被写体に向けると針が振れるので、ダイアルを回してその針をゼロに合わせます。この時のダイアルの指標を読みとれば、それで露出がわかるという、実に簡単なものです。今まで、使い方を考えようともしなかったことをとても後悔しました。それからこのことだけは知っていましたが、この露出計は驚くほど低照度まで測光できる能力を持っているのです。実際にやってみましたら、真っ暗な空や部屋の露出をちゃんと計ってくれるのです。もしかしたらこの露出計なら月明かりの雪原の明るさを測ることができるかもしれません。測光角は30度とアタッチメントをつけて15度&7.5度を測定できるようになっています。今までの露出計では測光角が30度一定でしか測定できなかったために、望遠レンズでの撮影に苦労していましたが、この露出計を使うと、望遠レンズでの測光にも使用できそうです。また、重量も240gくらいなので、首からぶら下げることができる大きさです。なかなかいい線いってると思います。しかし、露出計の測光窓が四角でできているのですが、これには困ります。このままでは偏光フィルターなどを装着して測光することができないため、改良しなければいけません。偏光フィルターは被写体の反射を除去するフィルターで、反射を除去することで対象物のより忠実な色彩を引き出すことができるフィルターです。しかし、この偏光フィルターはレンズ面に取り付けてその効果を実際に確認しながら使うために、露出計に取り付けられるように工夫しなければならないということなのです。
写真家にとり、光を測ることは何よりも重要なことで、僕はそのことに人一倍うるさい方で、なかなか良し!と言える露出計と今まで出会えませんでしたが、このことは僕の大きな悩みの種でした。望遠での正確な露出が決められなかったこと、月明かりの雪原の明るさが測れなかったこと、重量が大きかったことなど色々と悩んでいたのです。それでこの露出計が僕の未来を大きくすばらしいものにしてくれるかどうか、不安な気持ちで一杯です。
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ゴッセン プロフィシックス露出計。
真ん中のダイアルに書かれた1hとか2h、4hというのは時間のことで、数時間かかるような低照度の光まで測れることを意味している。ちなみに、定価で10万円を超える。
中古なので、買値は1/4というところ。ちなみに、これの姉妹機にルナシックスというのがあるが、これも低照度に強い。ルナとは月明かりのことを意味する。
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●No3
露出計のことも、自分の根幹部分に位置するけれど、中判カメラのシステムは自分の撮影システムの根幹をなします。その根幹のシステムの入れ替えを一年前から着手し始めており、この2月についに、念願だったハッセルブラッドSWC/Mのを導入することができました。
今までは、ずっとマミヤ645一筋で来ていたわけですが、ハッセルブラッドは僕の長年の憧れのカメラで、いつかは使ってみたいと誓っていたのです。それで、最近のデジカメブームのおかげで、この手のカメラは安く手にはいるようになり、僕には大きなチャンスが巡ってきていました。しかし、今回導入したSWC/Mというカメラだけは、驚くほど定価が高いことと人気が高いことから、今でも高く、なかなか購入することができないでいました。このカメラはツアイスのビオゴンの38mmF4.5というレンズのためにハッセルブラッドがボデーを特別に設計したカメラで、ビオゴンの38mmF4.5のためのカメラだと言えます。ビオゴン38mmというレンズは超広角レンズで対角線で90度、水平垂直に64度の画角を持ちます。ボデー内部にミラーはなく、ボデーの上に付いた外付けのビューファインダーでだいたいの撮影範囲を確認します。また、このカメラの最大の魅力は広角レンズには普通に見られる歪曲(デイストーションともいい、画面周辺での像のゆがみ、つまり、人の顔が伸びたり、ゆがんだり、建物がゆがんだりしない性質のこと)が限りなくゼロに近く、描写力もすばらしいと高い評価を受けているレンズなのです。つまり、世界最高の広角レンズといえば、これになるわけです。この秘密はボデーの短さにもあり、バックフォーカス(レンズの一番後ろからフィルム面までの距離のことで、広角レンズは焦点距離が短いために、バックフォーカスの距離は短いのが理想とされています。しかし、たいていボデーの大きさは広角から望遠まで対応させているので、レンズ設計に無理がかかり、結果として広角レンズは周辺がゆがんでしまうのです。)の小さい広角レンズに合わせて、ご覧のようにこんなに短く造られています。よく見てほしいのですが、カメラボデーの半分あたりで、切れ目があるでしょ?この切れ目の後ろ半分は実はフィルムバックといい、フィルムを入れておくものです。とすると、カメラ本体はというと、ハンドルの付いた、薄っぺらい部分だけになってしまいます。おかしな形でしょ!でも、僕はこのようなユニークな形がが昔からとても気になっていました。しかし、このカメラはものすごい高価なもので、僕には高嶺の花でした。いつもショーウインドーの高いところに飾られてあるのを眺めて、可愛いなあ!って思い思いしていたのです。
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●NO4
そのカメラがとうとう僕のところにやってきました。20年来の快挙です!高橋製作所の望遠鏡がやってきたときも嬉しくてしばらく呆然としていましたが、20年の思いの果てにやってきたカメラと今後どうやってつき合っていこうかと楽しみは尽きません。このカメラは今は亡き前田真三先生もたいそうお気に入りで、何かといえば、ビオゴンでお写しになられていたようです。写しやすいカメラとは言えませんが、そういう扱いにくさを克服してまで、使う魅力があるかどうか、これから使っていこうと思います。今後北国通信でも、ビオゴンなどで写した作品を紹介できるときには、その旨をお伝えしますので、どうぞ楽しみにしていて下さい。それでなくても、6×6判で風景を覗くと空が高く見えます。ましてゆがみのない超広角で写したとしたら、どんなに空は高く写ることだろう!どんなに雲は雄大に見えるだろう。星はどんなに端正に写るだろう!これからが楽しみです。ほんと。
ハッセルブラッドは長いこと憧れてきたカメラですが、単に憧れのカメラではありません。実際に使ってみると僕らのいうまさに「戦いのためのカメラ」と言えると思います。つまり高度な実践に使えるカメラなのです。
まず、驚くほど目の前がよく見えます。これはミノルタが開発してハッセルに供給しているファインダースクリーンの性能が高いおかげで、例えば、10m先の林の木立に広角レンズでピントを合わせることができます。他のカメラでは絶対にここまでの精度はなく、たいていおよその見当で写しているに過ぎません。また、目の前がはっきり見えるということは、何を写しているかをはっきりと知ることができるということで、このことは対象を静観するという姿勢にはなくてはならないことで、風景には絶対不可欠な要素なわけです。また、ハッセルブラッドにはツアイス(ZEISS)というドイツのレンズメーカーがレンズを供給しています。実際に写してみると、マミヤのレンズでは出てこない樹木の緑色が出てきたりして、まるで魔法のようなレンズに見えてきます。確かに、高いのだから違ってくれなくては困りますが、今後、さまざまなものを写してみて、マミヤと比較していきたいと思っています。今機能的に言えることはだいたい次の点です。写真1にあるように、斜め45度から見ることができるファインダーがあって、露出計が内蔵されているために、単体で露出計を持っていなくても撮影することができる利点があります。しかし、プリズムを通して見るために見え味はいいとは言えませんが、マミヤでは望んでも手に入らなかったものだけに、この露出計付のプリズムファインダーがあることはハッセルの大きな魅力です。露出計はライトバリューの読みとり式で、とても合理的な方法をとっており、買うまでわかりませんでしたが、使いやすいもので、ほっと一安心しているところです。これで、福寿草や小さな花などを露出補正なしで撮影できるので、肩の荷が下りた感じがします。今まで、マミヤで小さいものを撮るときには本当に苦労させられていたのです。 しかし、マミヤと違いハッセルブラッドのシャッターはボデー全面にしかついておらず、これではいけません。シャッターは先程のSWC/Mやマミヤ645のようにボデーの上に付いているべきで、このことは僕が最後までハッセルに行くことを思いとどまらした要因でした。その他にも欠点があり、多重露出がしにくいことや、ミラーを上げてしまうと、シャッターを切らないとミラーが戻らないなどがありますが、さて、これらの欠点を僕がどう克服できるか!この辺が今から問われてきそうです。
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●NO5
このほかにも、総合カタログを作り終えてからは、色々と細々なことを繰り返しやり続け今に至りますが、なかなか撮影の方はままならず、思うような天気になってくれないので困っています。機材を整理点検するためにはまとまった時間がとれていいのですが、冬の作品を作れないで、春を迎えるとなんかしっくりこないので、また冬がぶりかえして、このまま春に突入してほしくないと祈るばかりです。
そんなわけで、今月の作品はちょっと季節から離れて、月と太陽の作品。それと、僕にしてはちょっと珍しいスナップ写真です。まず月と太陽の撮影は噴火湾を望む南茅部(みなみかやべ)の高台からの撮影で、大船の縄文時代の遺跡の近くです。最近、冬になるとあまり太陽や月が見なくなりますが、今年のカレンダーの一月のところでも書きましたとおり、人の健康には太陽の光が必要だ!と最近つくづく思うばかりです。特に、朝日が重要で、これを浴びないと、健康を維持できないと思うようになりました。月は健康に関係ないと思いますが、精神への影響があるような気がします。余談ですが、冬になると、ドンコ(エゾイソアイナメ)やごっこ(ホテイウオ)タラといった深海性の魚が産卵のために岸よりして捕獲されるために、多く食卓にのぼるようになります。彼らは太陽の光とは無縁な海の底に暮らしており、産卵の時にだけ浅い海に寄ってきます。太陽と無縁の魚の顔をじっと見つめて、それを鍋にして食べながら僕は色々と空想してしまいます。夜、出航するフェリーの室内から真っ黒な海を見つめて、魚たちはこんなに暗かったらさぞかし寂しかろうと思うことがよくありますが、深海にすむ魚たちはどうなのでしょうか?目が退化しているわけではなく、キュートな目が二つちゃんと並んでいますし…。
スナップの作品は津軽海峡に面した福島町岩部での撮影。国道228号線で函館から松前に向かうとしばらくは海岸に沿って走りますが、知内町で海沿いの道は行き止まりとなり、いったん海と別れ山に入ります。そして再び、福島町で海に出てそのまま松前まで海沿いの道を進みます。その福島町に入り、国道と直角に左に折れると、福島町岩部の部落へと道は続きます。この道は、ツバクラ岬で終わりとなり、最終地点は、小さな入り江をつくり、なかなかいい雰囲気です。その入り江の手前には、小さな部落が続き、そこここで海苔を干している風景と出会います。なかなか黒々としたおいしそうな海苔があちこちでできており、とてもおいしそうです。実際、津軽海峡の磯辺に出てみると、その岩場では海苔が波に揺られている姿は、まるで黒いオーロラのように美しいものです。 有〜ぽんなどは採った先からうまいうまいと言って食べています。僕だけが採取に力を入れているわけですが、時間があれば、僕だって乾燥海苔を作ってみたいですね。しかし、そんな時間はありません。そこで、僕たちはつくだ煮にしてみます。つくだ煮でも十分おいしいものです。ここで、海藻の話をしましたが、みなさんどうか海藻をたくさんお食べ下さい。例えば、塩を入れて作る料理には塩の代わりにワカメを入れるなどしてできるだけ海藻を採って下さい。絶対に健康にいいはずです。ぼくたちは最近、昆布はもちろんのこと、乾燥海苔を買ってきておやつ代わりに食べることにしています。冬になって体が冷え切った時には暖かい鍋がいいわけですが、努めてその鍋にも昆布や海苔を加えていただいて下さい。是非お願いします。
もうすぐ3月。色々と節目の月を迎えます。僕たちはこの3月に奈良、四国の春を取材予定。その前に夜景のポストカードを造るなどまだまだ忙しい日が続きそうです。でも、四国の春の取材を楽しみに、今は寒さに耐えながらがんばるしかありません。寒い日が続きますが、どうぞみな様もお体を大切にされて、どうぞ元気いっぱい残された冬を過ごしていって下さい。がんばりましょう!
追伸1)とうとうこの冬中、庭のえさ台に餌を置き続けましたら、日増しに鳥の数ばかりではなく、種類も増えました。なんとあの美しい鳴き声のイカルまで登場しました。鳥たちを驚かせたくないので、撮影はしていませんが鳥たちに自分が餌を上げるようになるとは思いませんでした。でも、こっそり写真撮ってみなさんにお見せしたい!が今しばらくは辛抱。想像下さい。百羽以上の鳥が小さなえさ台に群がっている壮観な姿を!
追伸2)冬場の健康維持に野菜と果物を!北欧では野菜ができないため、死亡率が高いそうです。冬場の野菜が高いために冬場に野菜を食べないからだとか。みなさんもお気をつけ下さい。最近、函館の深堀町にある果物屋さんででっかいキャベツを5個300円で買ってきて食べています。スーパーのあの価格って何なのでしょう?
それから、ニンジンとリンゴのジュースを飲んでいます。これまたいいようです。風邪気味だと思ったらリンゴをたくさん食べてみて下さい。他には納豆とネギが良いようです。あとはハチミツですね。風邪に負けないでがんばりましょう!
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