の世界
113  ニッコールの代表作『君はきれいだ』 20061
ニッコールの代表作 『君はきれいだ』/1992年4月
マンサクの満開。 奈良県西吉野村
●NO1

■ついに来たフィッシュアイ・ディスタゴンC30mmF3.5

 2006年一月年初。いきなり静かな波乱の年の幕開けである。なかでも、年明け早々、とうとうハッセルブラッドのフィッシュアイ・ディスタゴンC30mmF3.5を手に入れた。
 このレンズを手に入れるのに僕は2年待った。長かった。しかし、とうとうやってきた。このレンズはフィッシ  どうして、そんなにこのレンズを待ち望んでいたかと言うと、それは北天・南天の星空の日周運動とか オーロラとか南半球の天の川全景を写したいという気持ちが強かったからです。
 右隣のレンズはマミヤM645のフィッシュアイレンズ。今まで使ってきたレンズで、国産では最も優秀な魚眼レンズで、見事な天の川の写真などが撮れる。 右隣のレンズはマミヤM645のフィッシュアイレンズ。今まで使ってきたレンズで、国産では最も優秀な魚眼レンズで、見事な天の川の写真などが撮れる。td>

●NO2

例えば、魚眼レンズの場合、国産の他のどのメーカーもその開放F値はf 4.5にとどまり、事実上ハッセルブラッドのみf 3.5の明るい開放F値を誇っている。
 開放F値がf3.5とf4.5ではどのくらい違うかというと、例えばオーロラならf4.5で8秒かかるところを f3.5なら4秒で写すことができる。たったの4秒か!と思うなかれ。この4秒の間にオーロラなどは動いてしまって、撮れないことだってある。
 しかも、こうした理論的な数字はいつだって数字上のことである。レンズの材質やコーティングの違いによって、もっと大きな開きになることも実に多いのだ!このことは今まで安物レンズによって辛酸をなめてきた僕は良く知っている。もうだまされたりはしない。
 
 ■ニコンマニュアルレンズ&フィルムカメラから撤退

 年始早々、あのニコンがとうとうフィルムカメラと手で操作するMFのニッコールレンズから撤退を発表しました。このことは、とうとう日本製のMFレンズやフィルムカメラが無くなることを意味しています。そして、ニコンにとっても50年の歴史に幕を引いた瞬間でもあります。
でも、今までニコンはよくぞ MFレンズやフィルムカメラを造っていてくれました!それだけでもすばらしいメーカーですね。聞けば、全売り上げの2%しかなかったとのこと。
他の日本のメーカーはあっさり売れないからやめてしまいましたが、ニコンだけは今まで造っていてくれたのです。
 ただ、僕はニコンを20年間使ってきたのに、今まであまりニコンのレンズを買ったことがありませんでした。
最初はお金がなかったことが一番の原因でしたが、風景写真にはニコンなどあまり小型カメラを使わないことも原因になりました。
 しかし、ニコンがMFレンズをやめた直後、今度はツアイスがニコン用にレンズを供給することを発表!
 ニコンを使っていた者にとって、一番気になる存在は今までコンタックスにしか供給されなかったツアイスレンズでしたが、ニコンとコンタックスとはカメラマウントが違うために、ニコンを使っている人はコンタックス用のツアイスレンズは使えなかったのです。
 それがもうすぐ使えるようになるのです。これはすばらしいことで、世界最高のカメラ・ニコンに、世界最高のツアイスレンズを付けて、使えるのですから!
 では、ツアイスのレンズとニコンのレンズとはどう違うのでしょうか。
 ニコンのレンズは実にシャープで、見事な解像力を誇り、人物から風景まで何でも撮れるように設計されています。
 それに対して、ツアイスのレンズは何でも写せるようには造らず、例えば人物だけを綺麗に撮れるようなレンズを設計し、一方で風景撮影用に別のレンズを用意するというやり方をします。
 こうした考え方は今までニコンなど日本製のカメラメーカーにはなく、人物を特に綺麗に独特に撮りたい人にはニコンレンズは不満な点もあり、ツアイスのレンズが使いたい!という人も多かったと思います。
 それが、今年からニコンとツアイスの両方のレンズが使えるようになったわけです。

●NO3

そんな中、僕は長いことツアイスのレンズの描写などに興味なく、ひたすらニコンを信じてやって来ました。
 その僕は今、懸命にニコンからライカに変わりつつあります。
ライカはツアイス同様、レンズ一本一本が専用に造られます。風景用はこれ、接写用はこれ、人物用はこれ…というふうに。
 そしてライカで写した写真は「空間に湿度」を帯び、開放付近のきめの細かな写りは見事です。
多分、ガラス材の材質が良く、ガラス材の研磨精度が高く、しかも偏心のない完璧な組立のなせる技なのでしょう。もし、ライカのレンズを見たら、誰しもがまるで宝石のように感じると思います。そして、一生涯付き合えるという信頼感は何にも代えがたいものです。
 国産のレンズなどはたいてい、10年もしない内にレンズが紫外線に焼けてくすんできます。しかし、ライカのレンズは数十年前のレンズでも問題なく使えるレンズも多く、これはライカと国産のレンズ製造の考え方の違いを示しています。
■『君はきれいだ』 今月の作品 ニッコールの代表作

今まで20年近くニコンを使ってきましたが、結局、最後までニコンのレンズを充分に使い込めないまま、ライカに移行することとなりました。このことは本当に心残りであります。
 しかし、この『君はきれいだ』と題したカタクリの写真を写したマクロニッコール105mmレンズだけは当初からずっと愛用して来たレンズで、僕はこのレンズを信じ、背景をぼかす写真を全部このレンズで写してきました。このレンズで写す透明感が何より好きで、今でもこのレンズにしがみついていたい!と思いながらこれを書いています。しかし、ニコンがMFレンズに見切りを付けたのと時を同じくして、僕もニコンからライカに変わっていきます。そこで今回の北国通信ではニッコールで撮影した僕のとっておきの一枚を送ろうと思いました。
 この作品は今から15年ほど前、1990年頃の撮影で、場所は上磯町の林内。僕はこの写真を初めての写真展となった『北国の童話』に『君はきれいだ』と題して展示しました。あれから、15年。カタクリの作品は無数に撮ってきましたが、この作品以上に気に入ったものは撮れませんでした。写真を写すことがあまりに分かりすぎてくると、こういう素朴な写真が少なくなる。初心を忘れてしまうのでしょうか。この写真を撮った頃は無我夢中でした。カタクリという花もあまり知りませんでした。この何も知らないという心の状態が飾り気のないこうした一枚の写真を撮らせたのだと思います。
 下の3枚の写真もマクニッコール105mmf2.8で写したものです。3枚とも透明感のある写真に仕上がっています。そして、シャープなピントと背景の柔らかなぼけ味がきれいですね。

『春のひだまり』/北斗市・4月
 マクニッコール100mmf2.8にコダクロームで撮影。1988年頃。見事なシャープネスと色乗りである。
『早春のリズム』/北斗市・4月
 2本目のマクニッコール100mmf2.8での撮影。1本目のレンズがコタコタになったので買い換えて撮影。抜けが良く、色も鮮やかに写るようになった。
●NO4

こうした作品を残してくれたマクニッコール100mmf2.8と僕は惜別し、思い切ってライカへの道を歩みだします。それが成功するか不成功に終わるか分かりませんが、自分で決めたことです。 このまま信じてやっていこうと思います。

■ホームページの改訂

2002年にホームページを作成して以来、全く更新をしないという批判を一身に浴びながらも時間が無く、ホームページを一度も更新しなかった丘のうえの小さな写真館のホームページ。
 この一月。ようやく重い腰を上げて、ホームページの刷新しようとしているところです。
 主な改良点は従来のエプソン製のひどいスキャナでとった写真からハイデルベルグのサファイアという高価なスキャナでとった写真に全部変えようとしています。デジタルカメラには及びませんが、それでも今までより綺麗に表示できると思います。
 その他、表紙などが軽量化されて、見やすくなると思います。また、今回は基本骨格だけの制作にとどめて、更新をしやすくしようと思っています。更新が完了するのは3月頃になると思いますが、もし一応完成し、アップできたら、再度お知らせいたします。楽しみにしていて下さいね。

■第2の作品 マンサクの花咲く頃

今月は暗室の改装中のため白黒写真が焼けないので、カラー作品をもう一枚送ります。
これは2001年に撮影した奈良県西吉野村で出会ったマンサクの花の作品。後ろに咲くのは山桜の花です。 実に見事ですね。日本らしいの春の訪れです。
 西吉野村というのは吉野の桜で有名な吉野町の南西部にある小さな村ですが、ここの桜は本当に見事で、天国を思わせるようなところです。その一角で写したのがこの作品ですが、ぽかぽか陽気の春の奈良を思うと、もういてもたってもいられなくなります。
 来る4月に5年ぶりにこの春の奈良を訪れようという思いも強く、その旅を目標に今は努力の毎日です。こうした北海道にない春に出会うのが今年の一つの目標です。
 また、北海道では今まで行ったことのないところを放浪したい気持ちも募ります。今まで誰も見たことのないような北海道の風景を撮りたいと思います。
 あの富良野さえ今の写真家の誰もが見向きもしないところがあると僕は思っています。そんな風景とじっくり向き合っていきたいと思います。
 ささやかですが、これが今年の僕の目標です。

大雪山黒岳に咲くエゾツツジの花 /マクロニッコール105mm
シマリス /ニッコール180mmf2.8ED
エゾユキウサギ /ニッコール180mmf2.8ED
狩場山南麓の牧場 /マクロニッコール105mm
遠い道 /ニッコール180mmf2.8ED
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