旅の空の下から
小さなトンネル
瀬戸内海の島を走っていると、
丘のうえの小さな写真館号では通れない道やトンネルと数多く出会います。
予告がないので、その手前まで行かないとわからないのでショックは隠せない。
しかし、こんなことを言うのも変だけど、
こんなに小さなトンネルが残っているのを知るととても嬉しくなります。
とてもメルヘンティックだからです。
何度でも言いたいのですが、
メルヘンとは
“人力の及ぶ微力さが、けなげに造り上げたものに宿る魂のようなもの”
のような気がしています。
その意味でも、何もかも大きくなってしまう昨今の北海道の様子はメルヘンからほど遠いのです。
こうした瀬戸内海の島の奥などに実は人の身の丈ほどのメルヘンが潜んでいます。
そのせいで、僕はこうしたトンネルと出会っただけで嬉しくなるのです。
 トンネル手前には半島を回り込んだ小さな入り江にひっそりと果樹園が広がり、
その静けさの壁を背景に小さな造船所の鉄板をたたく音が反響していたことを良く覚えています。
 そう、トンネルも、果樹園も、そしてけたたましい音を立てる造船所も皆メルヘンティックです。