セットポストカードの世界
12枚組700円
 函館の街が見下ろせる小さな丘のうえにいつの頃からか二本の樹が寄り添って暮らしているところがある。同じ季節、同じ時間を同じ丘のうえで暮らす二本の樹。もし一人だったらどんなに退屈なことだろう。 例え、一生同じところで暮らさなくてはいけなくても、愛する人がいることで、それは全く違った世界になる…二本の樹の物語…。
1)夕明り
2)草原を渡る風のように 3)一日の終わりに 4)お月様と並んで
5)お月様、こんばんは 7)花咲く丘で
6)夏雲の丘
8)冴え渡る夜に
11)夢の丘
10)素敵な予感
12)雪の妖精たちと
9)星月夜

『二本の樹の物語』
写真家 山下正樹
 人は一人で生きていくことはできない。少なくとも僕はそう思っているし、そう思い知らされてきました。
このことは長い間、一人で夢を探してきた僕の確かな思いです。
だから、二本の樹は僕にとって、そうなりたいと願った理想の二人のことです。
僕はそんな理想を思い抱きながら、
毎日二本の樹に会いに来て、その度に長い時間をかけて二本の樹を撮影したのです。

二本の樹は函館の街を見下ろす静かな丘の上に立っています。
農家の人が畑を手入れしにくる以外は訪れることもない至って静かなところです。
しかし、人間的には静かなところでありますが、動物たちにとっては過ごしやすいところで、
この二本の樹はいつも動物たち、特に鳥たちに愛され、そのすみかとなったり、憩いの場所になったりしているようです。

 かつて、僕たちはこの二本の樹の側に丘のうえの小さな写真館を建設したいと願い出たことがありました。
それで、市議会議員の方を通じ、函館の市役所を尋ねましたが、結局それはかなわぬこととなりました。

 しかしその後、この丘の近くに函館新道という高規格道路が建設されるなど、丘のうえの小さな写真館を運営して行くにはあまりに騒々しくなっていったのでした。

 当時の市役所の担当者の人がもしそのときに「許可」してくれたりしていたら、僕はきっと今の騒々しさに耐えきれないで、この二本の樹の丘を去っていたかもしれません。

 しかし、当時話を聞いてくれた市役所の方は丘のうえの小さな写真館のことを忘れないでいてくれ、今年なんと丘のうえの小さな写真館の制作する2008年カレンダーを注文してくれました。きっと僕たちのことなんか忘れてしまったに違いないと思っていましたので、本当にこんなに嬉しいことはありませんでした。

 カレンダーを制作し、販売していくことはとてもたいへんなことですが、このように思いも寄らない人からご注文いただいたりして、とんでもない喜びを感じることがあるのでやめられません。

 物理学では大きな石をどんなに力を加えても動かせなかったら仕事量は「0]であります。
我々が仕事と呼ぶときもそのような物理学的定義と似通っているわけでありますが、我々のカレンダー制作にはそうした物理学定義とは違うところがあるのです。それは心に残る、心の問題であります。
 カレンダー制作には愛すべきお客様との暖かな血の通った「ハート」の交流があるのであります。

我々、丘のうえの小さな写真館は二本の樹の側に念願の丘のうえの小さな写真館の建設は果たせませんでしたが、しかし、丘のうえの小さな写真館は二本の樹となり、全国のお客様と「ハート」の交流を成し遂げることができたのです。
 
 こうして、二本の樹の側に住まわずとも、つまりは、目には見えなくとも、もっと大事なことを二本の樹は学んだのであります。