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丘のうえの小さな写真館 北国通信の世界
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第117号-2 北国通信『北海道で過ごす6月の風景から』 2006年6月
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『道南噴火湾側、亀田半島の先端付近にある獅子鼻岬』
これはバリオエルマーR35-70mmF3.5というズームレンズで写した。やはり、ズームはこうした岩場の撮影には無理があって、階調もシャープネスにも問題があった。ライカはズームが良くない。
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『江差からすぐ北にある館の岬の断崖』
これは広角ではなく、アポエルマリートR180mmという望遠で写している。印刷では全くわからないが、その描写力は見事!の一言である。文句のつけようがない。プリントを見れば誰しもがため息をつく美しさである。
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『道南日本海側、江差町の北すぐにある鮪ノ岬 (しびのみさき)』
最近買ったばかりの最新のエルマリートR28mmで、岬に近づいてこれを写した。広角でありながらニコンのようにかりかりになって階調を失うようなことがなく、見事な線の描写をする。合格である。こんな広角に出会いたかった。ライカは旧28mmを30年設計を変えなかったが、10年前に設計を変更した新しい設計のレンズである。待った甲斐があった。
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『函館山裏側にある穴間海岸』
これは誉れ高いマクロエルマリートR60mmで写した。噂通り、見事なレンズで、線の出方といい、階調といいすばらしい。このレンズでそのプリントを汚すものはフィルムと撮影者でであり、レンズは完ぺきであると言える。
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こうした道南の岩場を使ったライカ研究は最近色の派手さと輪郭ばかりが強調された日本の風潮に対し、写真はそういうものではない、とする僕の信念に基づいている。
今の日本の写真界はデジタルにひた走り、銀塩写真でもそれに対抗して、レンズフィルム共に鮮やかさで人目を引く方向に向かっている。
僕はいかにも写真写真に見えるこうした見え方を嫌い、ライカにその可能性を求めた。日増しにこうした方向性は肩身の狭い思いをさせられることが多くなってきたが、どっこい負けるわけにはいかない。
必ずや見事な線の出し方と諧調と、思うような色を出せるようになって、日本ばかりではなく、世界の風景にチャレンジしてみたいと思いを馳せる毎日である。
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次にカラー作品を… |
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今月のカラー作品には本当のところ、日本海で出会ったハマヒルガオかすばらしい砂浜での夕焼けを考えていた。
しかし、信じられないことに函館でフィルム現像ができなくなったことを告げられて、僕の出したフィルムは更に時間がかからないと現像が仕上がらなかった。
それで、美しい野バラの写真にすることにしたのである。それにしても、とうとうフィルムの現像ができるのが北海道内では札幌だけとなり、なんとも寂しいことになった。それほどまでにデジタルに変わってしまったのか!と涙する他にない。
さて、この野バラの小径とは今から7年前の1999年7月4日に出会った。
僕たちはこの年、十勝の湿原の撮影に出ていて、その帰りがけに噴火湾沿いに南下、伊達市付近で野バラの満開と出会ったのである。幸い、時間があったので、目に付くところのほとんどに立ち止まって、撮影しながら帰路についた。
そうした中でも特に印象に残っていたのがこの道と野バラの作品で、いつポストカードにしてもおかしくないほど気に入っていながら先延ばしになっていたものである。
何しろ小径が緑なのが良い。たいていは砂利などを入れたり、アスファルトなどで固めようとするのだが、ここはそんな無粋なことはせずに、緑の小径を見せてくれている。そこに真っ白なレースラインが咲いているのだから見事という他なかろう!
野バラと言えば、ウエルナーとシューベルトという二人の作曲家の曲が思いつく。これはどちらもゲーテの「野バラ」という詩に曲をつけたものであるが、この同じ詩にあって、違うメロディーはおそらく人によって好みが別れるところである。 僕は個人的にはこの曲ばかりはウエルナーの「野バラ」が好きである。しかし、どちらの曲も捨てがたい良さがあり、すばらしい!と感嘆するばかりである。 こうした曲に登場する野バラをドイツ語で書くと「R嘖lein(レースライン)」であり、何と美しい言葉なのだろうか。僕はこのドイツ語のR嘖leinに憧れて庭に野バラを植えた。
しかし、実際に野バラは咲く期間がとても短く、なかなか庭木としては問題がある。しかし、どういうわけか、丘のうえの小さな写真館では醜く何も育つ予定のなかったコンクリートの壁の一角で野バラの大株が育ち、それが特に今年大きく美しく咲いたのである!(写真左下)
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味気ないコンクリート壁に垂れ下がるように咲く野バラ(左)とそれを育てた鳥たちの餌場(右)。
ちょうど左写真の野バラはこの餌場の下にあり、冬中この餌台を訪れる鳥たちの糞により、野バラが大きく生長し、今年見事な花を咲かせたのである。
写真の餌台は今年慶ちゃんが新しく制作した。今までのとは違ってなんと赤い屋根がついた。 |
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これは冬中餌台を訪れる鳥たちが小さくとも無数に糞をしてその栄養によって育った野バラであり、まさに鳥たちが咲かせた花であると言える。
また、上の写真右、餌台の右の草むらを見てほしい!何とうっとうしい草むらと思わないでほしい。これでも庭の片隅のことである。実はこの草むらはヤマブキの草むらであり、ヤマブキは黄色い花を咲かせ、満開になるとそれは見事である。
このヤマブキ、数年前に慶ちゃんがここに植えた。何も目的はなかった。
しかし、それが偶然にもここに大きな草むらを造り、その枝振りがほうき状に地上から吹き出す感じであることから、冬場に鳥たちの隠れがとなり、大きな鳥たちに襲われると彼らはこのヤマブキの茂みに逃げ込むのである。
そうして、鳥たちの糞によってヤマブキは大きく成長し、ますます鳥たちの隠れ家は大きくなっていく。
そして、同時に野バラまでも大きくし、見事なバラを咲かせたのである。まさに、庭で起きた偶然の連鎖とも言うべき一大イベントであろう。
野バラの香りはことのほか香しく、ほんのかすかにそよ風がそよげば、あたりは一面その芳香にうっとりしているようだ。 |
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