の世界
118号-2 『釜の仙境と大沼に咲く睡蓮』 20067
巨 岩 /ライカR8 エルマリートR24mm
恵山北側の岩石地帯の撮影。マミヤやニコンを使い、カラーだけをやっていた頃、僕は現実を直視できませんでした。常に、現実を撮る前に「考え」があり、こう撮ろう!と考えていました。しかし、最近はこうした現実のそのままの姿に目が留まるようになり、最初から考えて撮らなくなりました。
 岩の撮影に対しては、20年前バイトをしていた頃、昼休みに津軽海峡に行き、岩を眺めていると、疲れがス〜っと引けていったことを良く覚えており、疲れた精神を癒してくれる対象として岩を撮ります。
津軽海峡 二見 /ライカ R8 エルマリートR135mm f2.8
津軽海峡にも「北方」を思い出させてくれる海岸線がある。この写真は函館から恵山に向かう津軽海峡沿いの国道278号線からの撮影。武井の島を恵山側に行ったところが「新二見」というところで、その付近から撮影している。
 こうした「北方」の海岸にはなぜか引かれるものがある。どうしてなのかわからないが、こうした海岸線に立つと、今も失せぬ若き放浪の血が騒ぎ始めるのだ。
津軽海峡 日浦岬 /ライカ R8 ズミルックスR80mm f1.4
何度も訪れている岬であるのに、白黒で撮影しようと思うと、それまで見えなかった視点が見え始める。白黒写真には苦労が多いが、白黒写真を撮ることを通して今まで気にも留めなかった新しい風景が見え始める。こうした自分自身の新しい世界観が拡大することが白黒写真を始めた何よりの成果である。
知内川の渓谷 /ライカR8 エルマリートR28mmf2.8
今度は函館の西側、松前半島の中央部。そこに聳える大千軒岳から流れ下る知内川の深い渓谷の作品。
 大千軒岳はキリシタンが106人処刑されたことで知られる山だが、山奥深く、いつ来ても緊張感漂うところである。
 この作品は林道の途上から撮影しており、この林道をもう少し上がると広くなったところがあり、そこからは晴れた日には大千軒岳が眼前に見える。
 また、そこから後は、徒歩により知内川に沿って歩くと、大千軒岳へ登ることができる。
 途中、金山番所に立つ十字架が胸にしみる。
今まで急ぎで、道南の海と川と山で撮影した白黒作品を見ていただきました。いかがでしょうか。
道南はあまり観光的に脚光を浴びませんが、それがかえって新鮮な感動を与えてくれる地でもあります。
 特に、白黒写真を撮るようになってから、再び道南の地を巡ると、今まで目に入らなかった新しい風景に気づくようになり、体のどこからか新鮮な驚きと希望が生まれ始めていることが気づかされます。
 今後も今月同様、ハッセルブラッドとライカを駆使して、道南から北海道全体へ足を伸ばし、新しい目線で北海道を写しまくりたいと考えています。
 長いこと、レンズや撮影試験ばかりで、苦しい日々でしたが、おかげさまでだいたいの結論に達することができ、今後は思う存分撮りまくれる体勢が整ったと思います。

 8月の予定はこれから東京の浜野顕微鏡店へ実体顕微鏡を購入するために立ち寄り、紀伊半島を中心に撮影をしてこようと考えています。
 今回の撮影の旅ではあまりたっぷりとした時間がとれませんが、それでも可能な限り時間を作って、悔いのない撮影の時間にしたいと思っております。
 ライカのエルマリートR135mmf2.8というレンズにアポエクステンダー2×をつけ、焦点距離270mmで撮影した恵山の山容。
 フィルターはYA3というオレンジ色のフィルターをつけているため、ほとんど色収差の影響もなく実にシャープな写りをする。
<ライカの一眼レフ>
その昔、ライカの一眼レフなど神秘のベールの彼方にあった。
その存在だけは知っていたけれど、自分とは何の関係もない存在だった。
 そんな自分がまさかライカを使うようになるとは思いもよらなかった。
ライカはハッセルとは違い、実に軽快なコンパクトなカメラである。

最初は、ハッセルの予備としてだけ考えていたが
そのうち、ライカだけで写せないか?とさえ考えるようになっていた。

色々と試験を繰り返した結果、ハッセルのように余裕はなく
ほんの軽微なミスも許されないが、
その限りは、
風景に使っていける、唯一の小型カメラであると
確信できる。