森の奥の湖で 乾燥したひじきを水にもどす。 しばらくして 鍋の蓋を取り、水を捨てようとした。 すると 海の香りがする。 森の奥でかぐ、海の香り。 乾燥ひじきに封じ込められた海の香り。 目に涙が浮かんだ。 小さい頃よくかいだ、せつなく懐かしい海の香りを 青年になったぼくが 遠い旅の空、森の奥でその匂いをかいでいる。 森の暗闇と静けさの中で 海の香りとの出会った。