山下清春の版画はその素朴さゆえの魅力がある。
美しいだけの絵や写真や版画は他にどこにでもあり、
その人独特の味わいがある人はとても少ない。
その素朴な作品群は、
彼の生涯の活動を通して、また生来の性格より生まれ出たものであるが、
彼は生涯『町の版画家』であることにこだわり、
彼は人に版画を教えようとしなかった。
つまりプロとして版画で飯を食おうとしなかった。
彼の版画はあくまで食うためのプロの作品ではなく、
生きるためのアマチュアの作品である。
それゆえに、現代の皆が忘れた素朴な気配がそこには潜んでいて、
見るものをホッとさせる何かがある。
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