だいぶ八重桜のつぼみが膨らんで来た(右の木)。
この暗室の制作にあたって、
僕たちがこの八重桜を傷つけたのは
枝1本と根を1本のみ。
もちろん、この木がなければもっと広い暗室ができたけれど、
木はできるだけ切らないほうが良い。
特に八重桜などは、人間が勝手に花をいっぱい咲かせるように改良したために
その寿命は短いのだから…。
実は画面左側の巣箱のかかった白樺の木の隣にも八重桜があった。
しかし、数年前、その八重桜はこの世を去った。
僕が尊敬する札幌の伊藤武義先生が丘のうえの小さな写真館に来たとき
「この八重桜はきっと毎年いっぱい花をつけるでしょう!」と言われた。
「なぜ、わかるんですか?」と僕が聞くと、
「木というのは、自分が死ぬことが近いことを知るといっぱい花を咲かせるんですよ。
つまりは子孫を残そうとするんですね。」
と伊藤武義先生はおっしゃられた。
僕はその言葉が今持って忘れられない。
自分とその思いがダブルのだ。
ある時、このことを運送会社の若い人に話した。
すると、彼もいたく感心して、
トラックの屋根が八重桜の枝に触れないように配慮して
帰っていったことがある。
木にも遠慮し、木のことを尊重して生きることが大事なことなのだろう!